小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊻

確か、大阪万博の次の年のことだったと思う。

大阪に住んでいる親戚が、祖母と私と従妹を

招待してくれて、田舎から、初めて発展目覚ましい

「関西の都」である大阪へと足を踏み入れのだった。

小学生だった私には、見るもの、聞くものが全て、

物珍しかった。

そこで、初めて洋式トイレなるものに遭遇し、

使い方が解らず、悪戦苦闘した事が、今では、

遠い昔のエピソードとして、ひっそりと

私の記憶の片隅に仕舞われている。


そんな大阪の人生初の旅行の最中に、

他愛ない日常の一コマの出来事として忘れても、

全く不思議じゃない。

ほんの一瞬の出来事だったにも関わらず、

何故か、色褪せない「思いで」として残されている

出会いがあった。

出会いと言うには、あまりにも一瞬で、

そしてなんの変哲もない
短い会話に過ぎなかったのだが・・・・。


大阪の親戚が連れてきてくれた温泉。

温泉も初体験だった私。

建物に入ってすぐの場所に、土産物

コーナーがあった。

子どもの常として、やはり、そちらへ

興味がわいた。

従妹と一緒に、お土産物を物色。

そこで、私のハートを一瞬で射抜いたものが、

ショーケースに陳列してあった「パンダの貯金箱」

だった。

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「あ、これこれ、絶対これが欲しい・・・

お土産に買って帰りたい。」

そんなことを二人して話していたら・・・。

「ちょっと、お土産は、旅館の部屋に荷物を

置いてからにして頂戴!」と叔母に促され、

仕方なく、後ろ髪を引かれながらも

その場を後にしたのだった。


荷物を置くやいなや、従妹と私と祖母の三人で、

先ほどのお土産コーナーへと急いだ。

ワクワクしながら、ショーケースへと

近づいた私だったが・・・。


あろうことか、ほんの先ほどまであった

愛してやまないパンダの貯金箱が、

どこにも見当たらない。

「あれ、無いよ・・・どうして?」

困惑する私。

「何かお探しですか?」という店員さんの

問いかけに、

「ここに置いてあった、手を広げたパンダの貯金箱が、

無いんですけど・・・。」

「ああ、あれね、たった今売れてしまいました。」

「え~もう同じものはないんですか?」

「ごめんなさい、あのデザインは、あれが最後でした。」

ショックを隠し切れない私に、従妹が、

「ほら、こっちの方が可愛いよ。」

と手にお花を持ったパンダの貯金箱を勧めてきた。

「う~ん・・・でも、さっきの方が良かったなぁ~。」

仕方なく、花を持ったパンダの貯金箱を

買った私だったが、諦められす、あの時直ぐに

買えば良かったと後悔しきりだった。

あまりのガッカリぶりに、店員さんも気を使ったのか、

「ほら、あそこ、あそこにいる男の子が、あのパンダの

最後の貯金箱買ったのよ~、交換して貰えないか

聞いてみたらどうかしら?」

店員さんの指し示す方向を見ると、まだ2~3歳の

小さな男の子が大事そうに、パンダの貯金箱が

入っている包みを抱えていた。

ちょっと先を越されて、ムッとした表情をして

しまった私だが、さすがに、あんな小さな子に

交換してなんて、言えるわけがない。


諦めて、帰ることにした。


ところが、そんな一連の話の流れを

聞いていたのだろうか・・・。

その男の子が、私の方に近寄ってきた。

そして、その包みを私に向かって差出し、

「これ、おねえちゃんが、買うやつだったの?

ごめんね! あげるよ。」と言ったのだ。


私は、一瞬で、顔が真っ赤になった。

私より、はるかに小さい、この子の方が、

他の人の事を、きちんと思いやっていることに

気づいて、ムクれてしまった自分が、

恥ずかしくて、恥ずかしくて、仕方なかったのだ。


私は、「ごめんね。心配させちゃったね、

でも大丈夫だから。」

「パンダちゃん、大事にしてあげてね!」と

やっとのことで、その小さな男の子に、伝えた。

「ほんとにいいの?僕が持ってていいの?」

「いいんだよ、ありがとうね!」

小さな男の子は、うれしそうに、包みを

抱えながら、私に手を振り、

おばあちゃんと共に、旅館の中へと消えて行った。

何だか、周りの大人たちも、そんな二人の会話を

微笑ましく見守ってくれていたようだった。

しかし、当の私は、自分の我儘さに、早く

この場を立ち去りたくて仕方がなかったのだ。


部屋に戻り、包みをバックの中に

入れていたら、叔母が、

「何買ったの?」

「おばちゃんに見せてよ!」と言うので、

仕方なく、包みを渡した。

「あら、可愛いじゃない。良かったね買えて・・・。」

「ホントは、それが欲しかったわけじゃ

ないんだよね~、先に買われちゃったもんね~。」

と従妹が、さっきの出来事を話そうとしたので

「もう、いいの、それでいいから・・。」と遮って、

パンダの貯金箱を、叔母の手から取り戻し、

包んで、バックへとしまい込んだ。



「あら、何・・・なんかあったの?」

叔母の追及を逃れるように、私と従妹、そして

祖母は温泉に入るための準備をし始めた。


この温泉は、よそと違って土色をしたお湯だった。

「こんな泥みたいな温泉入れるの?」と

びっくりした私だったが、温泉に入り慣れている

祖母は、もう、気持ちよさそうにお湯に

浸かっていた。

従妹と私も、続いて入ろうとしたが、あまりに

お湯の温度が高くて、足を浸けるのが、

精一杯だった。


そんな時、広い温泉の湯船の向こうの方で

「熱いよ~熱いよ~。」と

泣き叫ぶ男の子の声がした。


「あれ、さっきの男の子じゃない?」

そう従妹が指さした。

湯煙の向こうで、おばあちゃんらしき人に、

無理やり湯船に入れられている2~3歳の

男の子のシルエットが見えた。


「多分、そうだね・・・。」

「熱いよね・・・私たちにだって熱いもん。

お子様には、きっと熱過ぎるよね・・・。

従妹も、私も、お子様には違いないのだが、

すっかり大人な気分で、女風呂に入れられている、

小さな男の子の事を、心配したのだった。


まあ、こんな、何てことない出来事だったのに、

あの買い損ねたパンダの貯金箱のデザインも、

男の子の言葉も、何十年も経った

今ですら、はっきりと覚えているのだ。


小さいのに、思いやりのある男の子として、

私の「記憶」に刻まれていたその男の子だったが、

何十年後かに、

「あ~三つ子の魂百まで・・。」

って、本当だな・・・と苦笑いするとは、まさか、

この時は予想だにしなかったのだ。

二度目に、彼に出会ったとき、私は、あの可愛い

2歳児が成長した彼と、同一人物とは

気づかなかった。  (そりゃそうだわ)

三度目に出会ったとき、あるキーワードで、

何十年も前の記憶がはらはらと紐解かれ、私に

大きな感動を齎すまでは、

半世紀近くかけて仕組まれた出会いだと

気づく理由もなかったのだった。
   

  (私の別ブログより引用)

 

ああ・・・そうだったんだ・・・。

 

有馬温泉のキーワードで、甦った記憶。

 

あの「パンダの貯金箱」を抱えた

無垢な幼子と、吉野ケ里遺跡で、写真を

撮りたいとごねていた青年、そして、今、ここに居る

女性の敵のようなSは、まさしく同一人物なのだ。

 

なんてこった!  ( ゚Д゚)!!

 

一体、何が、どうなったら、

こういう出会いが生まれるんだ!?

 

いや・・・ちょっと待て・・・。

 

何故に、Sと私しか知らないはずの「思い出」を

新人の女子達が知っている!?

 

まさか、お酒に酔った勢いで、その思い出話を

何の関係もない他人に、リリースしてしまったのか!

 

何で、人に話すかな・・・・。

 

Sとこの会社で出会ってすぐには、20歳と28歳で出会った

二度目の出会いしか思い出せてなかった私だが、

その思い出すら、お互い、暗黙の了解ってやつで、話さない

方が、良かれ・・・と思って黙っていたというのに・・・。

 

よりによって、第三者、しかも会社の人間に、

カミングアウトするなんて・・・。

 

(Sは、この三度の出会いに、いつから

気づいていたんだろうか・・・・。)

 

おそらく、この話を聞いた「新人女子たち」は、あらぬ

想像を巡らせ、あたかも、私とSとの間に、何か深い

関係があるのではないかと、勘ぐっていたに違いない!

 

「私、そうだったんだな~~って、思ちゃいますよ。」

 

「何を?」

 

意味ありげな視線と、質問を投げかけられたSは、

ぶっきらぼうに答えた。

 

「だって、そうなんでしょう?瑠璃さんの息子さんって

S所長との・・・・。」

 

あまりの飛躍しすぎた妄想に、私は思わず吹いた。

 

「無い無い、そんな事あるわけないじゃん!」(ヾノ・∀・`)ナイナイ

 

と、湧き上げる笑いを堪えるのに必死だった。

 

(だいたい、計算が合わんやないかい!

20歳と28歳で出会って、子どもが生まれていたなら、

息子は、もう、高校生になってなきゃいけない筈。

家の息子は、当時10歳だったのだ。

こんな簡単な計算ができないとは・・・・爆)

 

いくら、Sがドンファンだろうと、写真撮っただけでは、

妊娠したりしないぞ~~~~。(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

 

うけまくる私と裏腹に、Sは、苦虫を潰したような

表情を浮かべていた。

 

「俺の、何が、解るっていうんだ・・・。」

 

何故か、シリアスな表情で、そう呟くS。

 

ちょっと待て~~~~~!

そこは、まず否定やろ!

きっちり否定しないと、ますます勘ぐられるから!

 

意味不明な態度をとるSに、さすがに、これ以上

突っ込めなかったのか、新人さんたちは、仕事に

戻った。

 

いや・・・何だかな~。

すっきりしない展開。

 

そもそも、迂闊に、思い出話なんか喋るから、

こういう誤解をされたんじゃないか!

いい迷惑だ、全く!

 

ほんわかした、いい思い出だった筈の、有馬温泉での

出会いですら、泥水のように濁すつもりか?

 

一体何の因果が、こうさせるのか・・・・。

 

この頃の私は、Sとの三度の出会いが、意地悪な

神様の「悪戯」に思えて仕方が無かった。

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊺

会社では、相変わらず、何事も無かったかのように

淡々と仕事し、家に帰ってからは、家事をこなし、息子が

寝た後で、新人さんたちへの「最初で最後の手紙」を

書き綴っていた。

 

一人一人に、思うことがあって、ついつい手紙が

長くなりがちだったが、一枚一枚、心を込めて

書いていった。

 

仕事は、フルタイムでも、パートは、パートだ!

仕事の最終日に、一同に、お別れを言えるかどうか

なんて分からない。お別れが、言えなかった時の

事を考えて、それぞれに、ひっそりお手紙を

手渡すことも、視野に入れていたのだ。

 

そんなことも、露知らず、仕事に慣れてきた新人さん

達は、仕事の合間の、ちょっとした世間話に花を

咲かせていた。

 

「ああ、何かさ~、恋愛したいよね・・・。」

「うん、そうだね、仕事ばっかりだと、ちょっと参る。」

 

「瑠璃さん~、瑠璃さんの若い頃って、どんな恋愛

してました?」

 

「え~藪から棒に・・・何で、そんな、人の昔ばなし

聞きたいかな~?」(苦笑)

「だって、興味ありますもん。」

 

「そうねぇ~、私、片思いが多くてね、語れるような

楽しい思い出って、ほとんど無いわ~。」

 

「そんな事ないでしょう?」

 

「いや、そんな事ある!」( ー`дー´)キリッ

 

「今だって、誰かが、瑠璃さんの事、好きかも

知れないじゃないですかぁ~。」

 

「んなバカな!、そんな奇特な人がいるんだったら

是非一度、お目にかかってみたいものだわ~。」(大爆)

 

そんな私の、答えを受けて、何故か、新人女性の数人が

一斉にSの方へと、視線を向けた。

そして、その内の一人が、意味ありげに呟いた。

 

有馬温泉・・・。」

 

呟いた、新人さんは、まるで、

「私、解ってますよ!」と言わんばかりの、自信に満ちた

表情を浮かべていた。

 

「あ・り・ま・お・ん・せ・ん」

 

その七文字の響きは、私に、鋭い雷鳴のような閃きを

齎した。

 

古びて、錆びついていた記憶のオルゴールが、急に

音を立てて回り始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊹

以外に短い話し合いだったからだろうか・・・。

新人さんたちは、私とSとの会談の内容が

気になっているようだった。

 

「何話していたんですか?」

「うん、ちょっとね~ひ・み・つ。」

「え~~ずるい~~~教えて下さいよ~。」

「そのうち、解るからっ♡」

 

暗黙の了解のように、「私の退職」は、退職間際

ギリギリまで隠されていた。

 

退職する日の終礼まで、Sは、その事に全く

触れなかった。

あまりにギリギリだったので、ひょっとして、私は

誰にも挨拶することもなく、静かにフェードアウト

しなくてはいけないのかも・・・と思った程だ。

 

逆らう奴には、トコトン厳しいのが、Sの性分なんだ

ろうな~と、思いつつ、策士の私は、淡々と、最後

の日に向けての、準備を始めていた。

 

残される新人さん達へ、私が、最後にできること。

そして、Sに特大の楔を打ち込んでおく為の

秘密兵器。

 

 The last of the wedge

 (リーサルウエポンか!)

 

年上の営業のおばちゃんには、早々に打ち明けていた

ので、私の退職を知っているのは、SとY所長と、

そのおばさん3人だけだった。

 

「ちょっと、あなたが辞めたら、この会社、

めちゃくちゃになっちゃうじゃないの~。

きっと、立ち行かないわよ!」

「坊ちゃんの事、心配だとは思うけどさ、何とか

思い直すことはできないの?」

 

「ごめんね~。最後まで、出来る限りの事は

していくから。」

 

毎晩、徹夜しながら、私は、その準備に、取り組んだ。

全身全霊を傾けて、その準備に只管取り組んだのだ。

去り行く私から、皆に向けてのプレゼント。

何故か、その準備をする時間は、私にとって、

とても充実した「幸せな時間」だった。

 

退職すると告げてからも、Sも私も、表面上は、全く

普段通りに過ごした。

そのせいか、新人さんの中には、退職の当日になって、

やっと、その事実を知った人も居たくらいだった。

新人の何人かは、数日前に、気付いた人も

いたようだったが・・・。

 

相変わらず、冷戦状態の、Sと私だったが、奇妙な

変化が、Sに感じられるようになった。

男女の恋の整理整頓は、苦手なのだが、机上の整理整頓は

いつも、きっちりとしているS。

 

しかし、最近になって、机の上がメモで、大渋滞を

起こしていた。

必要事項や、連絡メモなどを、Sの机上に、皆が張っていく

のだが、毎回Sは、メモを読み、要件が終わると、さっさと

ゴミ箱に捨てていた。

 

しかし、何故か、メモを読み、処理してある印の斜線が

引いてあるにも関わらず、メモを貼ったままに

していたのだ。

 

「所長、すみませんが、新しいメモを貼る場所がありません

ので、古いメモは、処分していただけますか?」

 

あまりの事に、そう言うと、

 

「あ、解ったよ。」と言いつつ、捨てるでもなく、

机の隅の方に、纏めて貼り重ねていくのだ。

 

この異常事態に、新人さんも、訝しい様子で、Sを見ていた。

「何で、捨てないんですかね・・・。」

「さあ・・・。」

 

そんな視線に気づいたのか、ある日、綺麗に、机上が

片付いていた。

しかし、よく見ると、机の袖の引き出しに、その

机上にあったメモが、ゴッソリ貼り付けて

あるではないか!

 

「捨てられないんじゃない?名残惜しくて・・・。」

 

と、それを見たY所長が、呟いた。

「そのメモ、全部、瑠璃さんが書いた奴だけだろ?」

 

「え?そうですか・・・?」

 

袖に張り付けてあるメモを、ハラハラとめくってみると、

確かに、そこにあったのは、私の筆跡ばかり。

 

(「あら、可愛いとこあるじゃん!」)(^_-)-☆

 

私は、思わず、心の中で、笑ってしまった。

 

なんだかんだ言っても、いざ、史上最強の喧嘩相手が

居なくなると思うと、急に寂しくなったってとこか!?

 

さもありなん。

 

一部上場の会社社長すら、丸め込み、統括部長も、

経理部長も、へのかっぱ。

CAさんも、モデルさんも、多くの美女達も、自分の

一言で、靡かせてきたというのに・・・。

 

この、鉄仮面オバちゃんだけは、似ても焼いても食えぬ!

何を言っても、靡かなければ、何をしてもヘコたれずに

正々堂々(?)立ち向かってくる。

 

可愛さ余って憎さ100倍!の逆を行く、

まさかの・・・・・

憎さ有り余って、ちょっと愛しくなってきたとか!!(爆)

 

まあ、それは冗談だが、ここまで戦い甲斐のある相手も

なかなか、居なかったんでしょうなぁ~。

 

これこそが、ツインソウルの醍醐味というもの

かも知れない。

 

相手に、一番言いにくい事を言う、一番嫌な事をやる、

一番手厳しい存在。

 

そして、相手を映す「鏡」のような存在。

 

私たちは、完膚なきまでに、その仕事を

やり遂げようとしていたのかも知れない。

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊸

事務の求人を打っても、人が集まらない。

せっかく求人に応募してくれた、貴重な人材にも

Sが、自分の好みを反映させるから、決められない。

そんな膠着状態が、続いていた。

 

2班分の事務処理を、一人で行うため、必然的に私の

残業時間だけが増えていく。

仕事だけなら、別に嫌いではないから、何とか

ガンバれるのだが・・・。

 

私の帰りが、遅い事で、好ましくない状況が

家庭の中に、生まれつつあった。

息子の同級生の男の子数人が、私の留守中に、家に入り込み

勝手し放題になっていたのだ。

もちろん、少々、部屋の中が汚れる程度なら、私も

目を瞑るのだが・・・。

 

家に、遊びに来る子たちは、いわゆる「家に自分の居場所」

が無い子が多く、正直、素行が、あまり良くなかったのだ。

部屋を飛び出し、マンションの廊下や、エントランスで、

走り回り、住人に迷惑をかけることもあり、

私が、家に帰るなり、近隣の方から、クレームを

入れられることも、珍しくなくなっていた。

 

会社でも、ストレス多いのに、帰ってからも、また

近隣住民に気を遣う日々。

 

夫は、単身赴任なので、夫にも頼れない・・・。

 

それでも、息子も、やんちゃで、遊びに来る子達と、

同じように暴れているのなら、致し方ない部分はある。

しかし、息子は、大人しく、その大人しさを利用

されている事に、私は、とても危機感を抱いていた。

 

当時流行っていたゲーム機を、遊びに来た子たちに

隠され、その子たちの間で、ボロボロになるまで

使いまわされていたのに、息子は、彼らの事を

疑ったり、責めたりできなかったのだ。

 

(実際、学校でも、問題児だった、その子たちは、

のちに、学級崩壊を起こさせる「とんでもない

事件」を引き起こすことになるのだが・・・。)

 

仕事は、大変だったものの、新人さんたちに囲まれて

やっと、自分を必要としてくれる人と、仕事が

出来るようになっていた私は、正直、仕事を

辞めることを、真剣に悩んだ。

 

しかし、私が、あの会社にいる限り、早く帰ってくる

ことは出来ないのだ。

それは、問題児たちを、そのまま受け入れた状態で

放置することを意味する。

 

私は、決断した。

 

「会社を辞めよう・・・」と。

 

まずは、Y所長に、相談した。

 

子どもの一件を話し、辞めたくはないけれど、

事情が事情だけに、辞めさせて下さいとお願い

したのだった。

 

「いや、確かにお子さんの事、心配だけど・・・、

もう一人事務の人が入ったら、定時で帰れるように

なると思うし、もう少し、様子を見てくれないかな。」

 

「でも、求人打っても、なかなか人が集まりませんし

来てくれた人も、S所長が、OKを出さないので、全く

決まる気配がありません。」

 

「求人は、もう少し、別の媒体にも出すし、派遣会社にも

声をかけてみるから、考え直してくれないか?」

 

「求人については、もう、随分長い事、お願いしていましたが

膠着状態で、多分、S所長は、私が居る限り、新しい人を

入れるつもりが無いんだと思います。」

 

「まあ、確かに、瑠璃さんみたいに、しっかりと仕事を

こなしてくれる人が、なかなか居ないのも事実だけど。」

 

「案外、無理難題言って、使い倒して、私が、音を上げる

のを、待っているのかもしれませんよ。(苦笑)

煩いオバハンを、追い出して、若い美人事務二人体制に

したいのかも・・・。」

 

「いやいや、それは無いって・・・。絶対、瑠璃さんが

辞めるっていったら、S所長、慌てて引き留めるから!」

 

私の決意が、変わらないのを知って、Y所長は、渋々

Sへの退職願提出を認めてくれた。

 

Y所長は、何だかんだ言っても、S所長が、私の

退職の意思を、上手い事言って翻してくれると、

心のどこかで期待していたのだろう・・・。

 

「S所長、すみません、ちょっとお時間

よろしいでしょうか?」

 

「え、何?」

「ちょっとご相談がありまして・・・。」

「あ、じゃ、ちょっと向こうで話そうか。」

 

Sと私は、廊下の突き当りにある喫煙休憩所で

向かい合って座った。

 

「実は、ちょっと家庭の事情で、会社を退職させて

頂きたく、次の方との引継ぎもありますので

退職の時期のご相談をしたいのですが・・・。」

 

「ふ~ん、そうなんだ。まあ、事情もあるんだ

ろうし、君の事だから、もう、どうせ決めているんでしょ?

いいよ、別に、時期はいつでも。」

 

「じゃ、仕事あるから戻るわ。」

 

あまりのそっけない言葉に、さすがの私も、あっけに

とられた。

 

(おいおい、いくら目の上のタンコブのオババだって

一応、形なりとも、引き留めるとか、ご苦労様の一言

ぐらいあっても、バチは当たらんだろうがっ!)

 

しかし、まあ、これで私も、心置きなく辞める算段が

できると、開き直った。

 

「Y所長、話してきましたよ。」

「どうだった?引き留められただろう?」

「いいえ~~、いつ辞めても良いって、

気持ちよく、ご了解いただけました~。」(*'▽')

 

「な・・何だって! そんなバカな・・・。」

「そんな筈あるもんか!」

「いや、きっとS所長、パニクって、何が何だか

解らなくなってるんだ・・・きっと・・。」

 

「そんな事ありませんでしたよ。至極冷静で。

至極冷淡で。」(苦笑)

 

「やっぱり、私の事、邪魔だったんですね~。

これで、心置きなく、辞められますわ~。」

 

人一倍、仕事には励んできたという自負があった

私は、Sの、あまりに「そっけない態度」に、

少々腹は立ったものの、もはやこれまで・・・と

腹をくくったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊷

越すに越されぬ、田原坂♪ 

(古いな、誰も知らんやろ~)

 

越すに、越されぬ、年度末~。

 

そんな田原坂ならぬ、会計の年度末またぎを、

死に物狂いで何とか越えて、ヤレヤレ・・・と

ほっとしたい私だったが・・・。

 

4月の新年度は、子どもの学校の役員決めが待っている。

仕事をしているので、出来れば、ご免被りたい役員だが

小学校卒業までに、2度ぐらいは、お役を受け持つのが

暗黙の了解となっており、小1の学級委員に続き、今年

専門役員を受け持つのが、最良のタイミングだったのだ。

 

なにせ小6で、役員を仰せつかると、卒業学年となり、

何かと準備の為に、出事が多いらしいのだ。

その為にも、5年生となる新クラスで、最初に行われる

役員決めの父母会には、必ず、出席する必要があった。

 

私は、その父母会に出席するために、あらかじめ有給届けを

記入し、申請するために、Sの机上へと、書類を提出した。

次の日、その申請書類が、私の机上へ戻ってきていたので、

有給届けの綴りに、綴じようとしたのだが、よく見ると

Sの確認欄に、印鑑が押してなかった。

ああ、押し忘れたんだな・・・と思って、再度提出。

 

しかし、また無印のまま、机に戻された。

解せない私は、Sの後輩であるY所長に、その事を相談した。

 

「これって、休みを認めないってこと

なんでしょうか?」

 

「う~ん、そういう積りかもね・・・。」

 

「困ります! 以前から、申し上げていたように、

今年度は、子どもの学校の役員を、引き受けなければ

ならないんです。

その事もあって、早く、本来の体制である事務二人体制を

お願いしているのですが、求人を打たれる気配もありません。

早くから、きちんと役員のお話もしていたのに、いざ、

休暇届けを出したら、この仕打ち!」

 

「酷すぎません? 年度末またぎで、ただでさえ、

ありえない仕事量をこなす羽目になっているのに、

必要な休みすら頂けないのなら、私、辞職も、

やむなしだと思っています。」

 

「いや、ご尤もだよ。 そのまま、そっと休暇届出して、

休んでいいから。

何か、S所長が言ってきたら、俺が対処するよ。」

 

Y所長が、そう言ってくれたので、私は、3度目の休暇届を、Sの

机上に、そっと置き、そのまま翌日、休んだのだった。

 

休んだことについて、Sから、何か言われた訳ではなかったが、

正直、Sが、何を考えているのか、解りかねた。

 

「個人の事情なんか知るか~、ツベコベ言わず働け~」なのか、

 

「君の居ない一日を過ごすなんて、耐えられない!」ブッ;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )

 なのか。

  (自分で書いてて、笑えるわ~。爆)

 

まあ、どちらにしても、前途多難だった。

最低でも、これから月一の、専門委員会に出席しなければ

ならないのだ。

委員会の話し合いでは、役割を分担するために

決めごとが多い。

 

なるべく、仕事を持っている人の中でも、出来るだけ

時間的に融通の利く人を、メインの役職に

つけなければならなかった。

その為に、仕事の時間帯を、訊ねられるのだが・・・。

 「朝、8時に出て、通常は、夜7時に帰宅ですが

忙しい場合は、夜9時まで仕事があります。」と

答えたところ、皆、目を白黒して驚いていた。

 

一応パートって待遇なんだけどね~。♪

 

パートとは言えない、ロングな勤務時間に、さすがに

重大な役職をと、お願いされることは無かったが、

それでも、企画の多い専門委員だったため、意外に

学校へ行く機会は多くなったのだった。

 

私が、毎日のように、事務の二人体制をお願いした

ためか、やっとSも、重い腰を上げ、求人を打ったのだが、

何せ、時給が高いわけでもないので、さほど人も、

集まらない。

 

せっかく集まってくれた人も、Sが、難癖をつけ、

なかなか採用に至らなかった。

 

「ピンとくる人が、居ないんだよね~。」だと。

 

「あ~結局、ピンとくるのは、美人だけじゃないの?

そんな綺麗どころ来る訳ないじゃないですか~。

いい年のおばちゃんさえ、なかなか来てくれないし。」

 

そうボヤく私に、Y所長は、

「そうだな~、もちろん、それだけじゃないだろうけど

もしも、S所長好みの美人が来たら、一発で決まるのは

確実だな~。」

と苦笑い。

 

求ム

 

容姿端麗

年齢30才まで

上司をホメ殺ししつつ、手のひらで転がせる

おやじ殺しのスーパーテクニシャン!

 

(イメージは、こじるり・・・だな。)

 

まあ、無理なのはわかってたけど、そんな求人を

打ちたい衝動に駆られる私だった。

 

仕事で、話しをする以外、もう、なるべく目線すら

合わせたくない私は、なるべくSを避けるように

静かに、仕事をしていた。

 

今回の、年度末越えの、恐ろしい坂を何とか

登りきった私には、他支店事務と、本社総務部

経理課との有難い繋がりが、芽生えていた。

 

何か、困ったことがあれば、他支店の事務の

女性に、電話を掛け、相談に乗ってもらったり

助けてもらうことが出来たのだった。

お陰で、かなりな事情通にもなってしまった。

 

以前、Sに退職させられた、営業レディの一人から

どうしても、納得できないので、何とか、本社の

お偉いさんに、事情を聞いて欲しいと、懇願された

ので、無理だとは思ったのだが、総務部の女子に

相談してみたのだ。

 

すると、直接、逢うことは難しいので、手紙に事情を

書いて貰い、社内便で届けてくれる算段を

とってくれたのだった。これには、私も、

びっくりしたが、彼女達の機転のお陰で、

元営業レディさんは、お偉いさんからの

直接の手紙を貰うことができ、矛先を収めることと

なったのだった。

 

そう、女性は、ただ、聞いてほしい・・・ってこと

多いのよね。

聞いてもらえ、同調してもらえれば、大概の事は

満足できる生き物なのよね。

 

自分の好みの女性以外、バッサリ切っていくSに

もう少し、この「お偉いさん」程の度量があればね~

女性に、二度も、刺されることも無かったろうに。

 (出た!コアな情報)

 

このお偉いさんは、Sに負けず劣らず女性好きで

「艶福家」として名を轟かせていらっしゃった

らしいのだが、何故か、別れた女性からも、慕われる

という「徳」の持ち主だったらしい。

 

というのも、別れた女性には、きちんと生活に困らない

だけの「生活費」を、しっかりと渡されていたそうな。

きちんと、精神面も、経済面もケアされていた訳ですね。

そういうバックグラウンドがあるから、きっと、暖かい

お手紙を、元営業レディさんに送られ、彼女も、納得

したのでしょう。

 

身近に、いいお手本があるのに、ほんに残念な・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊶

魂は、確かに、共鳴していたのだろう・・・・。

 

他に、どんな科学的な考察をしてみても、

説明のしようもないのだし、

逆に、思いっきり、スピリチュアルな観点で

考えてみたとしても、明確な説明は、今もって、

何一つ出来ているわけではない。

 

私自身が、納得のできる「答え」というのが

「魂の共鳴」という現象だったということだ。

 

スピリチュアルな事に、何の関心も無い方に、

そして何の免疫も無い方に、この現象を信じてくれ・・・

とは、とても言えない。

私自身すら、当時は、疲れによる幻影だと思いたかった

程なのだから・・・。

 

しかし、そんな安易な解釈を許さない現象が、Sと私の

間には、多々あった事も事実なのだ。

 

ただ、三次元の世界「現実」は、これから、ますます

対立という、のっぴきならない事態へと、

突き進んでいくのだった。

 

 

「(性)愛こそすべて・・・」

 

それが、不倫だろうが、一瞬のフィジカルな関係だろうが、

自分の目的を達するための征服欲に、突き動かされたもの

だろうが、Sにとっては、それこそが、生きる目的であり

原動力であり、それが無い人生なんて、何の味気もない

チューインガムを永遠に、噛みしめるような無味乾燥な

時間にしか感じられないくらい、切っても切れない

「キーワード」だったのだろう。

 

一方、私と言えば、

「(純)愛」こそすべて・・・・」

 

どんなに深く愛した対象があったとしても、決して、それを

相手に押し付けないという、「鉄の掟」(マイルール)

を守り抜き?

長年、片思いの末、25才で、めでたく私の「愛」は

終焉を迎えたのだった。

 

純愛の果てに、辿り着く結果としての「SEX」であって

燃え上るパッションが、先行するなんて、当時の私には、

とても想像のつかないものだったのだ。

私の思いを知る諸先輩方から、相手も男なんだから

裸になってしがみつけ~~~なんて、アドバイス

頂いたりしたのだが・・・。

 

実際、「処女」の十字架が重いと感じることもあった。

しかし、無理やり、その十字架を捨てようとは

思わなかった。

 

いや~不健康だな‥‥全く。

 

不倫だった訳でもなく、特に、障害があった訳では無かった

筈なのだが・・・。

私は、愛した人に、自分の愛を、なかなか打ち明けることが

できなかった。

 

お節介な友人のお陰で、片思いの彼に、手紙を数年ぶりに

書く事になり、予感した通りに、振られたのだった。

振られると分かっていても、はじめて、彼の直筆の手紙を

手にした時には、心が震えた。

 

几帳面で、女性のような字。

きっと、最大限、私を傷つけまいと、配慮して書かれていた

手紙。

私は、その手紙を、涙を流しながら、読んでいた。

 

片思いでも、好きでいられた時間は、私にとって、

「生きている意味のある時間」だったのだ。

 

もう、諦めなければ・・・・。

そう思いつつも、その意味のある時間を失った私は

生きる屍のようだった。

感情も無い人形のように・・・。

 

数か月間、そんな時間を過ごし、ひたすら、彼との

数少ない思い出に浸っていた。

一度、ツーリングデートにも、誘ってもらい、

ウキウキと出かけたことがあったのだが、私が

一番幸せを感じた瞬間は、何故かソレではなかった。

 

何てことない。

 

彼と、その仲間たちと、焼き鳥屋さんで飲んでいた

時に、「私の切なる思い」を知る、仲間たちが、

彼の横に座るように、促してくれ、私は、幸運にも

彼の隣に座り、彼が口を付けた「水割り」を勧められ

めでたく「間接キス」を体験したのだった。

 (高校生かよ! あ、高校生で飲酒はダメだ)

 

アオハルかよ~~~~。

 

当時二十歳。(遅すぎるよ~おかげで、女子仲間から

ぶりっこちゃんと、呼ばれてしまっていたけど・・・)

 

そんな、ど~ってことない、よくあるシチュエーションで

私は、今まで味わったことのない、否定しようのない

「至上の幸福感」を味わい、体が震え、涙が出てきて

しまったのだった。(何という安上がりな体質)

思わず、そんな自分が恥ずかしくて、トイレに立てこもり

周囲を心配させたのだった。

 

この話しを聞いたら、きっと、Sは、鼻で笑うだろうな!

全く真逆な、Sと私。

 

「陰」と「陽」

だからこそ、ツインソウルが、務まるのかもしれないが。

 

ただ、お互い言えることは、「本当の愛」を知らない・・・

ってことだろうか・・・。

 

どんなに貪り食べても、雪でお腹が一杯にならない遭難者と

同じように、Sは、どんな女性と関係を持っても、本当の

愛に辿りつかない。

一方私は、愛のホワイトアウトで、一歩も動けない。

 

やれやれな、人生です・・・お互い。

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊵

Sの傍若無人な振る舞いは、女性関係のみならず、神聖な(!?)

会計ルールまでも、踏みにじるというレベルにまで達し、

そんなSを、本社のお歴々すら、止められない。

この事態に、流石のポーカーフェイスな、

鉄仮面オバちゃんの私も、怒りを抑える事は、

出来なかった。

 

それでも、私がやらねば、誰かやる!とばかりに、怒りを

パワーに変えて、シャカリキに、事務処理に邁進した。

土日の休日出勤は、当たり前となり、体も、心も

疲れ切っていった。

家に帰れば、家事だって待っているのだ。

夕食を作り、後片づけを済ませて、リビングのソファーに

座ると、もう、いつの間にか眠ってしまい、息子に

起こされることも、度々あった。

その為か、その頃の、記憶は、かなり曖昧だ。

 

なのに、今でも、この頃の夢を時々見るのだ。

 

「あれ、私、会計締めて本社に送ったっけ・・・。」

夢の中で、不安になる私。(T_T)

 

(トラウマかよ!)

 

その頃の私は、自分のメンタルを損なわない為に、日ごろ

聞きもしない音楽を流し、それにギリギリ支えられながら、

休日の事務処理を淡々と行っていた。

 

途中で、CDの音楽が切れようものなら、ものの一分も待てず

直ぐに、また同じ音楽を再生する。

その姿は、まるで、イライラしたティーンエジャーそのもの

のようだった。

それでも、メンタル保ってられたのは、「エンヤ」さまの

癒しの音楽のお陰でしょうか・・・・。

 

営業担当者は、催事が終わってしまえば、後は天国。

お祭り騒ぎが終わって、打ち上げすれば、また新たな

気持ちで、スタートできるのだが・・・・。

 

前代未聞の、掟破り、「年度末またぎ~~~」という

パンドラの箱を開けてしまったSのお陰で、私には、

ありとあらゆる困難が、降りかかってきた。

 

パンドラの箱は、確か最後に、「希望」という素晴らしい

プレゼントが、出てきたはずなのだが・・・。

私には、「重度の肩こり」という、有難くない贈り物

だけが、残されていたようだった。

 

年度末の処理もしつつ、毎日の仕事も二班分、こなさな

ければならない。

 

催事が終わり、のんびりと談笑する新人さんと、Sを

横目に見ながら、私は、只管、仕事に打ち込んだ。

 

「いや、何、ちょっと、シャカリキになりすぎ

なんじゃない?そんなに焦らなくて大丈夫だって

ちょっと休憩したら?」

 

薄ら笑いを浮かべながら、そんな他人事のような、

無責任な言葉を投げかけるSに、

私の怒りは、ついに爆発した!

 

「やってらんない!」

 

私は、立ち上がると同時に、バンと机を両手で叩いた。

 

一瞬、新人さんも、Sも、言葉を失った。

 

私は、頭を冷やすために、立ち上がり、ウォーターサーバー

ある方向へと、歩き出した。

何か言いたかったのか、或いは、偶然なのかも知れないが、

丁度、Sも立ち上がり、お互い、向かい合う形となった。

 

否応なく、目が合う事態に・・・。

二人が、相対し、目線が合った瞬間、そこに

不思議な磁場が開いたように、感じた。

 

 

Sと目が合った瞬間、私の視界は、真っ白になった。

体が、金縛りにあったように、動かず、立ち尽くす私。

 

そして、次の瞬間、私は、別の場所に居た。

 

いや、正確には、別の場所に居る映像を、

見せられたのだ。

 

そこは、どこか、空気の澄み切った高原のような

場所に立つ、レストランだった。

 

木の壁や床と、可愛いテーブル。以外に広い場所だ。

窓から見える景色は、林のようで、緑が目に眩しい。

私は、その景色を堪能しながら、テーブルに付こうと

していた。

 

すると、入り口の方から、誰かが入って来るのに気づいた。

 

それこそ、まさに、S本人だったのだ。

 

すると、私は、懐かしい人に会ったかのように、手を振り

お互いに歩み寄った。

自然に、テーブルに座り、談笑する二人。

 

なんて、平和な光景だろうか・・・・。

 

 

「え・・・あれ、今、私は、本当はどこにいるの?」

 

そう、我に返った瞬間、私は現実に引き戻され、

ガクッと、からだに衝撃が走った。

 

一体私は、何を見せられていたのだろう・・・・。

 

これが、世に言う、

「白日夢」というやつだろうか・・・・。

 

一体何秒、こんな状態でいたのだろう・・・。

 

ふとSの方を見ると、顔面蒼白で、同じように

立ち尽くしていた。

 

まさか・・・同時に、同じ「白日夢」でも見たのか!?

 

Sは、プルプルッと首を振り、私たちは、お互いを

見ないまま、すれ違った。

 

この状況は、周りから、どう見えていたのだろう・・・。

微かに、女子たちの、囁き声が聞こえた。

 

「ねえねえ、今の見た?目線絡んでいたよね~。」

 

まじか・・・・・。

 

 

しかし、誰が信じてくれようか・・・。

 

私たち、どうやら、

「今、一瞬、ここに居なかったようです。」

       ・・・なんて事。

「どこか別の場所へ、飛んで行ってました。」

     ・・・なんて事。

 

当時の私にも、この体験は、理解できなかった。

 

なんで、こんな体験をしたのか・・・。

なんで、こんな事が、起こるのか・・・・なんて。

 

この時から、既に、十数年。

様々な、不思議な体験を重ねた私は、確信している。

 

そう、Sと私は、ツインソウルなのだと。

現実が、どんなに反発し合う間柄だろうと、相容れぬ

思考・思想・生き方だろうと、「魂」は共鳴してしまう

ということを・・・。