小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その54

賞賛の中に、こっそりと「猛毒」を仕込んだ手紙。

Sも、Y所長も、そんな手紙を、家で、たった一人で

読むのだろうか・・・・。

 

そんな思いを秘めながらも、私は、にこやかに、すこぶる

穏やかな表情で、会社の一人一人に手紙を渡して行った。

 

 おまえも、悪よの~~~~。

 

(30歳若かったら、「あなたの番です」の西野ちゃんが

やった役、もっと上手にやれそうです!(時事ネタ)爆)

(-。-)y-゜゜゜

 

一人一人に手紙を手渡し、握手をし、それぞれの相手の

反応を静かに受け止める私。

 

まさに、パートのおばちゃん事務が、最初で最後に、

主演を勝ち取ったような場面に、Sは、しょざい無さげな

表情で、終始、黙りこくっていた。

 

単なるパートのおばちゃんが、こんなにも、皆の心の中に

入り込んでいたなんで、彼は、想像もしなかったのだろう。

 

事務的に、ほんとに挨拶だけで、数分で、退職の儀式なんて

終わると、思っていた筈なのだ。

 

「何なんだ、今、見せられている、この光景は・・・。」

 

彼は、内心、イラついていたかも知れない。

 

毎回、どんな場所でも、どんな場面でも、自分が主人公で

自分の思い通りのシナリオを描き、自分の好みの女性を

自分のストーリィー通りに、操るのが、Sの一番の

得意技で、彼の人生の醍醐味だった筈なのに・・・・。

 

若くもなく、美しくもなく、自分に従順でもない、単なる

脇役のおばちゃんに、一瞬でも、主役をかっさらわれる

なんて、彼のプライドが許す筈もない!

 

そんなSの思惑とは裏腹に、新人さん達の思いは、最高潮に

達してしまったようだった。

これには、私も、いささか驚いた。

 

手紙を渡し、最後の挨拶をして、静かに立ち去る予定

だったのだが、最後に、思いがけない演出が、私を

待っていたのだ。

 

彼らに促され、集合写真の真ん中で写真を撮り、花束を

渡された私は、柄にもなく、ちょっと涙ぐみそうに

なっていた。

 

そんな私を見送るために、新人さん達は、二列で向き合い

腕でアーチを作って、その中を通って、私を送り出して

くれようとしていた。

 

(いやいや、ちょっと待って~~さすがに照れるわ)

(〃▽〃)ポッ

 

何だか、変な汗が出てきそうだったが、若き彼等の

出来る限りの最後の演出に、有難さがこみ上げてきた。

 

「あんたって、幸せ者よね~。」

 

そんな、年配営業レディのおばちゃんも、自分の事の

ように感動して、涙ぐんでいる。

私は、意を決して、その「愛あるアーチ」を、歩かせて

貰った。

営業所の他のメンバーも、そのアーチに参加した為に、

仕方なく、アーチに加わるS。

 

そのアーチを20人分潜れば、出口に向かう筈だったのだが

名残惜しかったのか、新人さんたちの配慮なのか、その

アーチは、潜り抜けた人が、さらに後列に加わることで

社内を、ウネウネとトンネルのように、エンドレスに

続いて行った。

 

「本当に、ありがとう。皆さんのお陰で、幸せでした。」

花束を抱えながら、

「もう、ここで大丈夫ですよ~、ずっと続くと、泣いちゃう

からね~。」

 

そう言って、私は一礼し、そのエンドレスなトンネルは、

やっとハラハラと解かれた。

 

エレベーターを降り、ビルを出ても、窓から、新人さん達は

手を振ってくれた。

私は、最後に大きく手を振って、もう、振り返らずに、

そのまま、真っ直ぐ歩いて行った。

 

「振り返らなかったね・・・。」

 

そんな誰かが行った言葉が、背中越しに聞こえていた。

 

私は、もしかしたら、人生で一番幸せな瞬間を、今

この時に、迎えていたのかも知れなかった。

 

家族でも、友人でも、同じ世代でもない若い彼等彼女等に

本当に必要とされてた・・・

 

という、この上ない愛情深い「認証」を得て、

生まれて初めて、揺るぎない「自己承認」という

欲求が、初めて完全に満たされた、絶頂体験を

私は、したのかも知れない。

 

例え、彼らが、「報われない可愛そうなおばちゃん」

に同情して、ちょっと大仰な演出をしてくれていたと

しても、私の満たされた気持ちに、少しの陰りも

与えることなど、出来なかったのだ。

 

親からも、自分の家族からも、そして、私の本当の

生みの親からも、そんな満たされた気持ちを、

味合わせて貰った事などない、鉄仮面おばちゃんの、

最初で、最後の・・・・甘美な時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その53

Sの気持ちを、上げるだけ上げて、長い手紙の最後まで

読んで貰わなくては、私の「策略」は、失敗するのだ。

 

さりとて、浮っついた表面的な美辞麗句だけでは、Sの

心を動かすことなど、出来る筈もない。

 

Sに対する「真摯なお願い」編の手紙は、本当に、心を

込めて、私が見つけた、Sの数少ない美点を並べ、

最大限に、褒めちぎった文章がメインとなった。

 

まあ、こと仕事に関しては、S本人も、「俺って仕事できる

じゃん!」という自負は、少なからずあったとは思うのだが

なにせ、例のセクハラ・パワハラで、打ち消され、誰かに

誉めてもらうことなど、あまり無かったと思われるのだ。

 

以外に、「誉められる」ってことは、Sにとっても、

新鮮な出来事だったかもね!

 

Sの後輩指導の手腕を、褒めちぎり、いつまでも、慕われる

「良き先輩」「良き上司」でいて下さい・・・・という

下りは、まさに、私の祈るような願いのこもった一文だった。

 

まあ、生憎、美点を、それしか見つけられなかったからね~。

なので、言葉を変え、表現方法を変え、繰り返し繰り返し、

Sの潜在意識に訴えるべく、手紙を綴ることになった。

 

誉められて気持ちがアゲアゲになったところで、

肝心の、本題に入るのだが・・・・。

 

Sのパワハラと、セクハラを防いで貰うY所長との関係。

 

まだ、Sの洗脳から抜け切れていないY所長に、目覚めてもらう

為に、Y所長には、Sの悪行三昧を書き連ね、新人さんを守って

くれるよう、情に訴えたのだが・・・。

 

SとY所長が、なあなあに戻らない為にも、私は、Sへの手紙にも

楔を打ち込んだのだ。

 

Y所長は、お人好しで、情に脆い人ではあったのだが、残念な事に

とても猜疑心の強い人間でもあった。

新人さんが入社する前、福岡支店の立ち上げ時に、年配の灰汁の

強すぎる営業レディを、纏めあげることができず、本来なら

事務方でスクラムを組んで、勧めて行かねばならない事も、

営業レディに忖度するために、ないがしろにしてきたのだ。

 

会社の規定をも無視し、(あれ、Sの悪い習慣受け継いだ!?)

自分の安い給与から、身銭を切って、営業レディに貢いだり、

一筋縄ではいかぬ古老の営業レディボスの、いいなりになって

事務方の立場を上げたり下げたり・・・。

 

ひいては、何か、そのボスに、良からぬことを耳打ちされたのか

私を試す、姑息で、地味な策略を仕掛けてきたりしたのだ。

私は、Y所長が、そこまでするような人間とは思っていなかった

ので、正直、その策略に気づいた時には、愕然としたのだった。

 

事務所の運営のための、「手許金」。

営業のガソリン代やら、出張費やら、事務用品代やら、毎日

細かく出て行くのだが、私は、前職で、同じような仕事を

やっていたこともあって、毎日、しっかりと帳簿と合わせて

いた。

しかし、ある時から、ホントに、数円、数十円の単位で、金額

が、狂いだしたのだ。

最初は、私の数え間違いか、誰かが、勝手に両替をして、計算

が合わなかったのかと思っていたのだが・・・。

減るだけではなく、増えることもあり、さすがに、これは

可笑しいと思い、Y所長にも、それとなく訊ねてみたのだが、

誰も、金庫は触っていないと言うのだ。

 

「このお金、どうしましょうか?」

数十円、帳簿より多めの現金となった時に、Y所長に訊ねたのだが

「原因が、はっきり判るまで、封筒にでも入れて、別に保管して

おけば・・・。」という、指示だったので、それに従い、釈然と

しないまま、私も金庫の奥に、封筒に入れて放置することに

なった。 

 

誰も触らぬ筈の金庫のお金が、増減する!?

奇々怪々な話だ!

 

それと並行するように、何故かY所長が、「もしかしたら

ウチの社長が、来福するかもしれないよ~。」などど

言い出したのだ。

かねてから、豪快で知られる社長に、一度お会いしてみた

かった私は、それを真に受けて、「楽しみですね~。」

と言っていたのだが、しかし、いつまで経っても

社長が、来る気配はなかった。

 

これは、Y所長が、営業レディの大ボスに、良からぬことを

耳打ちされて、私を嵌めるための、小銭紛失作戦だったのだ。

社長が来る!というのは、私が、お金を誤魔化しているのが

バレルよ~~という、注意喚起の積りだったのかも

知れない。

しかし、当の私は、そんな事してもいないし、想像すら

していないから、Y所長も、社長ウエルカムな感じの

私に、???が止まらなかったのかも知れないが・・・。

 

「あの事務員、お金誤魔化しているんじゃない?」とでも

大ボスに、言われたのだろうか・・・。

事実、心ある営業レディの一人が、「貴方をを辞めさせ

ようと、営業レディの大ボスが、画策している」と、

こっそりと教えてくれたので、私も、はたと気づいたのだが。

 

営業レディの大ボスに、いい様に扱われ、見下げられていた

Y所長を、何とか支えてきた積りの私にとって、このY所長の

裏切りは、怒りが湧くというより、情けない気持ちの方が

先に立ったのだった。

 

しかし、福岡支店を恙なく回していき、Sのパワハラ・セクハラを

発動させないためにも、Y所長の悪行を、今明らかにして、

追及するのは、得策ではなかったのだ。

 

なので私は、その時は、天然ちゃんを装って、Y所長の策略なんて

これっぽっちも、気付いてませ~~んって体で、

過ごしていた。

 

しかし、その事実をリリースする、千載一遇の時が、

今まさに来たのだ。

 

そう、SとY所長との間に、楔として打ち込むリーサルウエポン。

 

それこそが、Y所長が、私を試すために仕込んだ、

数十円の硬貨だ!

 

手紙に入れた金属製の鍵。

 

おそらく、Sが、そう勘違いした金属こそ、その硬貨

なのだ。

二通目の手紙には、Y所長が、私に仕掛けた姑息な

お試しの策略と、大ボスの悪行を、つぶさに書いた。

 

女性には、だらしないSだが、おそらく、この一件は

彼の逆鱗に触れたように思う。

 

勿論、Sとて、策士。

 

Y所長に、直接確認などは、しなかっただろう。

 

しかし、、この、たった数十円の硬貨は、SとYとの間に、

確実に、冷たい隙間風を吹かせたに違いない。

もしかしたら、私の本当の退職の理由は、コレでは

ないのか・・・と、Sは思ったかも知れない。

 

まあ、そんなことで辞めるほど、私は軟ではないのだが。

 

このリーサルウエポンは、私の思う以上に、二人の間に

楔を打ち込んでしまったことに、あとで私は、気付かされる

事になる。

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その52

冷淡な策士にしては、随分、リップサービス過剰気味の

書き出しではあったのだが、なにせ、摘んでは捨て

摘んでは捨てと、女性を、野辺の雑草の如く、

扱ってきたSが、相手なのだ。

 

やっぱり、先制パンチは、必要不可欠!

 

のっけから、

 

「S所長との出会いは、衝撃でした!」

 

なんて、安っすい恋愛小説の書き出しみたいな・・・

思いもしない、読みようによっては、情熱的なラブレター

にも思える一文を目にして、一体ご本人は、

どう反応したのだろう。

 

勿論、あの分厚い手紙と、鍵かもしれない謎の金属を探知

したSが、その場で手紙を開けるわけはないと、私は踏んで

いた。 仕事が終わり、アパートに戻って、おもむろに

手紙は開けられたのだと、私は、思っている。

 

開けた時のSの顔が、どんな表情だったか、見たかったですな!

 

手練手管のモテモテ星人が、冷淡な策士おばちゃんの、必殺

ファイヤーアタックを、どうかわしたのか・・・。

煮ても焼いても食えぬ、中年おばさんのドンキホーテぶりに

思わず、冷笑を浮かべたのか、鼻で笑ったのか、よもやまさかの

「ドキリ」としたのか・・・。(爆)

 

それとも、「気づいてたのか・・・。」と思ったか・・・。

 

そう、二人の公然の秘密(なんか怪しい響きだな)だった、

三度の出会いに、私が何も触れないことで、もしかしたら

Sは、私が、それに気づいていないと思っていた

可能性もあるのだ。

 

まあね、別に、何のやましいことがあるわけでなし、与太話

ついでに、「いや~奇遇だったよね~。」と話しても、別に

差支えない程度の、出会いではないか!

 

変に隠していたくせに、酔って、新人さんたちに、一部を

リリースするから、良からぬ憶測を呼び、荒唐無稽な

ラブストーリーを、捏造されてしまうのだよ!

 

全く、ええ迷惑ですわ!

私の「信用」を返せ~~~。

 

まあ、そんな怒りはこの際、目を瞑って、残される新人さん

達の、見えない防波堤になれればと、Sに何と思われたとしても

最後まで、手紙を読んでもらうために、私は、無い知恵を

絞りだして策略を練ったのだった。

 

私は、手紙を2通に分けた。

一部は、Sに対する「真摯なお願い」

もう一部は、SとY所長との、関係性を根底から、ひっくり返す

爆弾を仕掛けていた。

そして、その爆弾の実弾こそが、Sが鍵と勘違いしただろう

金属なのだった。

 

なんだか物騒な話だけれど、手紙を読まなければ、何だコレ?

で終わる代物なのだ。

手紙は、順番に読んでもらわねば、私の策略は、失敗する。

 

手紙を封印するときは、Sが、順番に読んでくれるよう

注意書きを書き、そして祈った。

 

「去り行くおばちゃんの、最後の願いを、

どうか、神様聞き届けてください・・・。」と。

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その51

そう、問題は、Sへのアプローチの方法。

 

なにせ、老練で悪知恵働く、ドンファンのSが相手なのだ。

正攻法で行ったって、撃沈するだけだ。

さりとて、浮ついた手練手管など、完全に見透かされて

しまうに違いない。

 

冷徹な策士のおばちゃん VS 老練悪徳女たらし

 

なかなかな好カードですな!

 

私は、半分祈るような乙女の如く、真摯に、誠実に、

そして半面、どこか悪女のように強かに、「企み」を

こっそり織り込みながら、手紙を綴っていった。

 

Sは、手紙に精通している。

 

人の心のひだに、上手く忍び込むことにも、精通

している。

そんな、一枚も二枚も上手なSに、私の「企み」を

隠しつつ、長い長い手紙を、最後まで読ませること

ができるのだろうか・・・・・。

 

何度も何度も、自問自答しながら、手紙を書いては

破り書いては破り・・・・。

 

(あらやだ~、人生一度っきりのラブレター書いた時より

頑張ってるじゃん、わたし。)

 

それにしても、書き出しが難しいな・・・。

 

何せ、Sと私は、バチバチの宿敵同士ではないか!

 

入り方を間違うと、一枚目で、破り捨てられる可能性も

否めないのだ。

 

で、仕方なく伝家の宝刀を抜くことに・・・。

 

 

「S所長、S所長との出会いは、まさに衝撃でした・・・。」

 

(お~~~い、ラブレター書いとんかい!)

 

はい、掴みはOK!

 

自分で、呆れて突っ込みながらも、最初の一行を書いたことで

私の肝は据わり、二十数枚に渡る、長い手紙を一気に

書き上げたのだった。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊿

Y所長への、手紙には、彼の眠っている正義感を揺り起こす

為に、そして、僅かに残っているだろう、先輩であり、戦友

であるはずの「Sへの買いかぶり」を払拭してもらうために、

情と理を、織り交ぜながら、今までに起こったSに纏わる事件、

私の知り得る、全ての事実を、書き綴った。

 

Sの目的達成のための、非情さと、傲慢さは、Y所長も知る

ところではあるのだが、Y所長の、人の良さと、優柔不断さと

Sに対する思い入れの深さは、Sの本質を真っ直ぐ見るには

大甘なサングラスとなっていたのだ。

 

そのサングラスを外して、生の、見たくない、スルーしたい

Sの本質を見、そして、それと向き合って、尚且つ、若き新人

さんたちを、Sの毒牙から、守って貰わねばならないのだ。

私が、この職場を去る以上、Sと対等に渡り合い、戦っていける

のは、もうY所長しかいないのだ。

 

Sが、福岡店の所長として赴任すると決まった時の事だった。

Y所長は、私に、Sの武勇伝を聞かせてくれたことがあった。

 

その武勇伝は、男性同士の話なら、拍手喝さいを持って

盛り上がる、格好の酒のつまみには、なったかも知れない。

しかし、女性である私にとっては、眉を顰めるしかない、

聞くに堪えない、恋愛中毒患者の与太話にしか

聴こえなかった。

 

とにかく、街ですれ違おうが、電車で乗り合わせようが、

たまたま出張中に、機上でであった客室乗務員であろうが

Sは、アンテナに引っかかった女性という女性に、果敢に声を

掛け続け、とにかくデートに持ち込むという荒業の持ち主

だったのだ。

 

(そうそう、昔あったよね~。妖精みたいな純粋で

可愛い彼女とデートの最中、8歳も年上のお姉さまに、声を掛け、

無理くり写真を撮って、大目玉くらったこと!)遠い目(=_=)

 

しかし、そんなSの高度なナンパ技術と、テクニックに、実は、

Y所長は傾倒し、むしろ崇拝していた節があるのだ。

 

Y所長は、確かにSとは対照的で、恋に奥手な部分は

あったのかもしれない。

しかし、そんなナンパな男を、普通なら軽蔑し、冷ややかな

目でみても不思議ではないというのに、Y所長が語るSの

武勇伝には、愛しい人を語るような、夢見る遠い目つきと

尊敬の念が、入り混じっていたのだ。

 

しかも、Y所長は、こう言ったのだ。

「いや~、俺も女だったら、一度抱かれてみたいかな。」

 

(げっ、まじか~~~~)('Д')キモイ~

 

「いや、男としてでもいいな・・・もしも、S所長に

●●●出せって言われたら・・・・ピー音発令中

・・・しちゃうな~~~~。」

過激につき、表現を自粛させて頂きます。)

 

何だか、実際、そんな事があったんじゃ・・・・と

ついつい、疑ってしまいたくなるほど、Y所長のSに

対する「思い」は、特別だったのだ。

しかし、Y所長も結婚し、子どもも授かったことで、

家族が第一となり、現実を見ることができたのでしょう。

 

「おれ、もう昔みたいに、S所長が、手を出した女に

因果を含めて、別れさせる手伝いなんてしないから!」

「色々女に手を出すのはいいけど、すぐに放置して

次に行くからさ、結局俺が、いつも後始末させられる

羽目になってたんだよ!」

 

思わぬカミングアウトでしたが、確かに、Sにとっては

使い勝手の良い、後輩だったに違いありません。

 

確かに、家族は大事です。最優先してもらいましょう。

でも、その次ぐらいに大事にしてほしいのが、新人さん

達でした。彼らの真面目な情熱と、仕事に対する真摯な

姿勢を、決してSの私利私欲と、酒池肉林の為に、汚して

貰っては困るのです。

 

そこで、去り行く私が、仕組んだ手紙。

どれほどの効力を保ち、どれほどの時間稼ぎが

できるのか・・・。

 

問題は、Sへのアプローチでした。

 

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊾

その退職の事実は、新人さんの一部に、漏れてしまった。

「本当に退職するんですか?」と驚いて、聞きに来た子も

いたのだが、「うん、黙っててごめんね~家庭の事情でね」

と、こっそり答えたのだった。

 

終礼になっても、Sの話は、別件の話で長々と続き、こりゃ

フェードアウトだな~と、半分諦めていたのだった。

 

最後の最後になって、やっとSは、「知っている人もいるかも

知れないけど、瑠璃さんは、今日で退職されます。」と告知

を入れてきた。

 

知らなかった人は、びっくり仰天。

 

「うそでしょ~~~。」と顔を見合わせている。

 

「じゃ、瑠璃さんから、みんなに一言どうぞ・・・。」

Sが、そう振ったので、「では、お言葉に甘えて・・・。」

と、一歩前に進み出た。

 

「実は、お別れのご挨拶が出来ない場合もあるかと思って

皆さんに、お手紙書いてきました。」

 (チクリと反撃する私)

 

「帰る前に、お一人お一人机を回って、お渡ししようかと

思っていましたが、お別れの時間を頂いたので、今、ここで

渡させて頂きますね。」

 

「まずは、〇〇さん、今までどうもありがとう。」

新人の女子から次々と渡していく手紙。

 

もう、手にした時から、半泣きの子もいたのだが、

「あ、今開けて読まないでよね、恥ずかしいから・・・

絶対家に帰ってからよんで・・・・。」

 

「あ~~~もう、開けてるし!」

 

私の、念押しを聞く前に、既に、手紙をオープンして

号泣している新人女子が・・・・。

 

「いや、ダメだって!持ってかえりなさ~~~い!」

 

男子は、ちゃんと言うことを聞いてくれるのだが、女子達は

お互いに、手紙をオープンし、内容のシェアが始まって

しまっていた。

 

「瑠璃さん、ほんとに、よく私たちのこと見てくれていて

泣けてくる・・・。」

感想を言ってくる子も、チラホラ。

 

(ちょっと、これは計算外だったな~。)

 

しかし、ベテラン組にも、手紙は渡さなければならないし。

 

私は、ベテランの営業オバちゃんにも、Sの愛人にも、新人の

事務の子にも渡した。

 

「そして、Y所長、色々お世話になりました。長い手紙を

書いてますので、必ず、お家で読んでくださいね!」

 

「で、更に長~いお手紙になりますけど、S所長の分です。」

 

そう言って手渡すと、何故か、ドッと笑いが起きた。

訝しそうに、手紙を受け取るS。

 

そして、Sは、片手に、その手紙を持ちながら、しきりに指を

動かして、感触を確認していた。

 

「そう、硬い感触。」

 

紙類とは、明らかに違う感触を、Sは、瞬時に気づいたのだった。

 

「所長、何て書いてあるんですか?」

そう聞きたがる新人さんをしり目に、Sは、「いや・・」と

短く返事をし、すぐにカバンに仕舞ったのだった。

 

そうそう、ここで開けて貰っちゃ困るのよ!

 

「Sよ、硬い感触は、合鍵なんかじゃないからね(ふっふっふっ)」

指を上下に動かした様子から、彼は、長くて硬いもの・・・・

封筒に入る金属製の物・・・鍵!?」

 

そんな風に、連想したように、私には見えた。

 

「まあ、鍵ちゃ、鍵か!」

「Sの、心の奥底にあるものを開け、そして、封印すべき

物を仕舞い、また閉じる為の「鍵」ね!」

 

Y所長の手紙も、長い時間をかけ、彼の良心に訴えるべく、

必死に書いたのだが・・・。

何より、Sの手紙には、最新の注意を払って書いた。

長すぎる手紙を、最後の最後まで、読んでもらうために、

私は、一世一代の博打を打ったのだった。

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊽

行き過ぎた偶然と、あざとい演出に辟易していた私だったが、

ついに、私の後釜となる、事務の女性の採用が決まった!

心の底から、ホッとする私。

 

私の退職は、表向きには隠されていたので、あくまで彼女は

2つあるチームの一つ、Y所長チームの事務担当として

採用されたことになっていた。

 

しかし、実際は、私は退職するわけで、彼女に仕事を教えるにも

とにかく時間が無い。

通常の仕事をしながら、彼女にレクチャーをしていく私。

 

しかし、彼女は、話を聞くだけで、一向にメモすら取らないのだ。

「大丈夫?解るかな・・・・解らない部分は、質問してね!」

そう言っても、「はい」と答えるだけで、話は聞き流されていく。

 

「一応、引継ぎのノートは作るけど、自分で書かないと、解らなく

なるからね、メモしていた方がいいよ。」

「大丈夫です!」

(おいおい、君は、聖徳太子並みの記憶力を、お持ちなのかい?)

 

私の経験上、こういうタイプの人ほど、仕事ができないのだ。

それどころか、仕事のツボすら、理解していない人が多い。

 

私たちのやり取りを見ていて、Sも不安に感じたのか、彼女に

向かって、「覚えようとしないで、メモに書いて、忘れた方が

楽だよ!」とアドバイスしてきた。

しかし、彼女の態度は変わらない・・・。

 

(こりゃ、大変かもな・・・・。)

 

案の定、彼女は、全く仕事というより、事務処理が出来ない

タイプで、ベテランおばちゃんが、のちに激怒したのだった。

彼女のお陰で、私は、辞めてからも、彼女に仕事を教えるために

また、事務所へ通うことになるのだった。

 

しかし、せっかく採用された彼女に、厳しく当たって、

辞められては、また、私の退職日が伸びてしまう。

私は、残された少ない時間で、出来得る限り、彼女に繰り返し

教えた。

 

そして、ついに、私にとって、待ちに待った「最後の日」を

迎えたのだった。

当然、私の退職を知る人は、朝礼で、その事を皆に話すのだと

思っていたのだが、新人の事務の子だけを紹介し、私の退職話は

華麗にスルーされたのだった。

 

「おいおい、まじかよ! そこまでするのか~~~。」

 

「まあ、いいさ、それも想定内。お別れのお手紙は、既に

用意済み、終礼とともに、一人一人手渡すだけよ。」

 

Sの冷淡な行動は、予め、想定していたため、私は、終礼まで

極めて冷静に、普通に過ごしたのだった。

 

しかし、ベテラン組で、私の退職を知る人が、不憫に思ったのか、

私の退職を、漏らしてしまったのだ。