小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その⑪

やっぱり出遭ってた・・・。

 

古い記憶を辿った時に、ぼんやりと思い出したことが

一つだけあった。

 

しかし、その思い出の輪郭は、掴みどころが無いほど、

儚い記憶のような気がしていた。

 

毎晩、お風呂に入りながら、記憶のテープを巻き戻す私。

 

そう、そう、確か、27・・・8の頃。

3つ年下の友人から誘われて出かけた、吉野ケ里。

 

当時、私は、全く古代の遺跡とかに興味が無くて、

「どうしよう・・・」と思ったのだが・・・。

久しぶりに、彼女が誘ってくれたのだから・・・と

思い直して、出かけたのだった。

 

吉野ケ里自体は、田舎の、のんびりした場所にあったのだが、

そんな場所にも関わらず、門の前には、既に行列が出来ていた。

「並んでまで見る程のものかしら・・・。」そんなネガティブな

気持ちを、抱いて行列に並ぶ私。

ただ、並んでいる間も、久々に会った彼女との会話は、思いのほか

弾んだ。

 

いつの間にか、私たちの後ろにも、行列が出来ていた。

「いつ頃、入れるのかしらね・・・。」

 

かなり長い時間を待たされて、私たちは、流石に退屈し始めた。

すると、私たちの、真後ろに並んでいた、若いカップルと

目が合った。

「こんにちは」

「こんにちは~」

 

「どこから来たの?」

気軽に話しかける私達。

彼女は北海道、彼は、埼玉から、はるばる来たのだという。

 

「へ~遠距離恋愛なんだね・・・大変そう・・・。」

そう突っ込む私たちに、彼は、言い辛そうに答えた。

「いえ、まだ僕たち、そんな関係じゃなくて・・・。」

「え~てっきり恋人同士かと思ったのに~。」

「知り合ったばかりなの?そんなに遠くて、一体どこで

知り合ったの? あ、大学が一緒とか?」

 

「いや、そういう訳でも無いんですけど・・・。」

そう答える彼女は、透明感のある、まるで妖精みたいな

ピュアな雰囲気を醸し出していた。

 

「女の子は、可愛いけど、男の子は、パッとしないな~。」

と、心の中で、思わず採点してしまう私。

 

そんな他愛のない会話をしているうちに、いつの間にか

列は進み、会場の中へ入ることが出来た。

案内の人の説明を聞き、公園内を廻る私達。

 

高床式の住居の中にも入れるようだ。

しかし、困ったことに、当日、私は、ロングのプリーツスカートを

履いていた。

まさか・・・こんな梯子を上って上がるって知ってたなら

こんな格好してこなかったのに~。

後悔しても、あとの祭りである。

 

スカートを抑えつつ、梯子を上る私。

スカートに気を取られていた私は、上り切った所で

低い天井の鴨居に、頭をぶつけてしまった。

「あ~痛い!」

「大丈夫?」

思わず、心配そうに顔を覗き込む友人。

「あ、大丈夫よ・・・油断しちゃったわ。」

「気を付けてね、まだ、あと2つ櫓もあるわよ~。」

 

「うん、ありがと~。」

今度は、用心して登る私。

なのに、また鴨居に頭をぶつけてしまった。

「ちょっと、本当に大丈夫?」

「あ~私、なんてどんくさいのかしら・・・。」

情けなくなる私。

「今度こそ、気を付けてよ」

「大丈夫よ、流石に、三度ぶつけたら、バカでしょ~。」

 

自分で、そう言ったにも関わらず、私は、またもや、ぶつけてしまった。

友人は、呆れるのを通り越して、笑いを我慢していた。

後ろから来ていたカップルも、もはや笑いをこらえるのは

難しかったらしい・・・。

 

「なんで、三度もぶつけるかな~」

 

「私だって、気をつけてたのよ~、でもね大丈夫って思った

瞬間、何かに、頭を持って行かれたのよ。

まるで、誰かに、手で、鴨居へと引っ張られたみたいだったんだから~。

 

笑いを堪えきれず、クスクスと笑っていたカップルだったが、

私の、そんな意味不明な説明に、何故か、男の子だけは

急に、真顔になったのだった。

 

笑いが起こったことで、私たちと、そのカップルは、急に

仲良くなった。

 

もうそろそろ、公園巡りも終わろうかという頃に、急に

男の子が「一緒に、写真を撮りましょう!」と

提案してきた。

「あら、二人で撮ったらいいじゃない。撮ってあげるわよ。」

そう言って、二人を並ばせ、写真を写す私。

「じゃね~」

 

そう言って、帰ろうとすると、「やっぱり記念に写真撮って

下さいよ~お姉さんがた~。」と男の子が追いかけてきた。

 

写真嫌いの私は、断ったのだが、なかなか、男の子は

納得してくれない。

仕方なく、一枚だけ写真を撮った。

「写真、送りますよ~住所教えてください。」

そう言う男の子に、

「いいわ、要らない、捨てて頂戴。」と言って

手を振る私達。

しかし、尚も追いかけて、住所を、しつこく聞こうとする男の子。

 

とうとう、友人が折れて、自分の住所を教えていた。

ぽつ~んと残された彼女の表情を見ていた私は、

男の子に、説教を始めた。

 

「あのね、デートで来ててさ、他の女の写真撮ったり、

住所聞いたり、どういうつもり?」

「もっと彼女大切にしなさいよ! あんなにかわいい子なのに!」

 

そう息巻く私に、彼女の方は、諦めたみたいに、

 

「いつだって、こうなんですよ・・・。」と寂しそうに答えた。

 

「何ですって!いつも、こうなの?」

 

呆れる私達。

 

「いや~綺麗な女性を見ると、放っておけないんですよ~」

 

「どの口が言うか・・・どの口が!」

 

呆れかえった私たちは、可愛い女の子に、同情しつつ、公園を後にした。

 

後日談として、写真は、友人の元に送られて来なかったとの

ことである。

 

だったら、撮りなさんな・・・・である。

 

 

もう、既に、二十歳の頃から、女性に対する尽きせぬ興味

って奴が、芽生えていたんでしょうかね~。

 

お前は、イタリア人か!

 

やれやれ・・・・。

 

思い出した私だったが、全く笑えないエピソード。

 

どんな出会いだよ・・・・全く!

 

この思い出は、私の心の中に、ひっそりと仕舞っておくこと

にして、S本人にも、他の誰にも話さないと、私は決めた。