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小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その⑲

「大丈夫かしらね・・・A子ちゃん。」

「まあ、さすがに、初日から、いきなり禁じ手には

出ないでしょうけど・・・。」

「徐々に、間を詰めて・・・・って感じかな・・・。」

 

「やっぱり、20代の女の子から見たら、魅力的に見える

のかね~。」

「そうね・・・私達ぐらいの年齢になると、色々冷静に

見られるんだけど・・・やっぱり若いとね・・・。」

 

そんな会話を、営業のおばちゃんと交わしながら、何気なく

Mの方を見た。

 

Sが、自分のチームで、一番最初に指名したのが、可愛いA子

だったことに、少々不安を感じているのか、電話アポイント

も、集中できない様子だった。

 

「もしも、怪しい雰囲気になったら、Mちゃん、阻止に

動き出すかしら・・・。」

「どうかね~、表立っては、無理じゃないかしら・・・。

一応、先輩だしね・・・。」

 

そんな心配をしつつも、仕事に追われる私達。

夕方になって、やっとSと、A子が帰社した。

 

待ちかねたように、別のチームの新人の子たちが

「どうだった? 上手く行った?」と、興味津々に

矢継ぎ早に、A子に質問する。

 

紅潮した頬に、ポニーテイルを揺らしながら、キラキラした

瞳で、「うん、楽しかったですよ・・・ね・・・所長。」と

Sの方を向いて微笑むA子。

 

「良かった~アポ取れたんだね~、ねえ、どんな話したの?」

 

きっと、別チームの新人達は、お客様とのやり取りを、

逐一聞きたかったのだと思うのだが・・・。

 

しかし、A子は、天然なのか、故意なのか・・・思いもよらぬ

爆弾発言を繰り出した。

 

「もう、すぐに打ち解けちゃって~~、結婚の

話にまで、なっちゃいましたよね~、所長。」

 

この返事に、全員ポカ~ン。

 

しばらくして、「え、どういう事?」

 

「まさか、お客様にプロポーズでもされたの?」

「そんな訳、ないじゃないですかぁ~。」

「それじゃ、一体、どういうこと?」

「所長と結婚の話まで、進んだんですよ~。」

 

「はあああ?」

 

皆、驚きすぎて、絶句。

 

「おいおい、所長が既婚者だって、知ってるよね?

知ってて、愛人も居る、この場で、宣戦布告かい!」

 

と、新人の思わぬ、大胆不敵ぶりに、心で突っ込みを

入れる私。

 

「おいおい、そういう言い方をすると、誤解を招くぞ~。」

まんざらでもなさそうな顔で、ニヤつきながら、Sが、

言葉を挟んだ。

 

「つまり~ドライブ中に、どんな結婚式がしたいかとか~

どういう人が、理想か・・・とか、凄く話が弾んで

楽しかったんですよね~~~~ね、所長。」

 

天然なのか、腹黒なのか・・・。

計りかねる発言だったが・・・。

 

それを聞いて、

「なんだ、そう言う事だったの、びっくりさせないでよ

所長と結婚の約束でも、したのかと思ったわよ~。」と

笑ってくれる、優しい同期に救われたA子だった。

 

勿論、そこに一人だけ、心穏やかならぬ女性が居たことは、

私と、おばちゃんのみぞ知る、秘密だったのだが・・・。

 

その後、A子が、一人での営業が不安だと言うので、

Sのオブザーバーは、3日ほど続けざまに行われた。

 

しかし、さすがのSも、次のかわい子ちゃん新人が

控えているので、A子ばかりに掛かり切りになる訳にもいかず、

「一応、一周ローテーションして、まだ不安のある時には

付き添うから・・・。」と言って、次の子のオブザーバー

に切り替えた。

 

取りあえず、一通り、当たりを試してから・・・。

というのが、どうやらSのセオリーらしかった。

 

営業センスも、女の子の心を掴むトークも、得意中の得意な

Sにとって、営業のオブザーバーなんて、お堅い心構えは

皆無だったことだろう。

 

とにかく、密室で、若い娘と、楽しく車中デート!

ついでに、営業の心得もちょっとは出して、尊敬されちゃおう!

 

そんな、Sの黄金郷時代は、残念ながら、暫くは続くのである。