小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉖

取引先との間に、暗雲が垂れ込めそうな事態になった

その折も折、なんと、今まで、放置プレイを決めこんで

いたSの奥様と、お子さんが、来福する事になった。

 

アレ・・・以外に、奥さん、いい感してるかも!?

 

「ねえねえ、ちょっと知ってる?」

訳知り顔で、年長のおばさんが、小声で私に話しかけてきた。

「何?」

「Mちゃんだけどさ、来週、Sの奥さんが来るじゃない。

奥さんが来てるときは、電話掛けないように、Sに念押し

されたらしいわよ!」

 

「え~念押し! 念押しされないと、掛けちゃうわけ?」

「電話できないと、寂しい」とか言ってたわよ~。

「呆れた・・・。」

「お子さんも来るんだもの、せめて親子のデートぐらい

静かに待ってあげるのが、現地妻のルールよね~。」

 

 現地妻のルールって!(爆)

 

もう、自分の言っていることに、何の意味も正当性も

ないことは解っていたが、せめて、子どもたちには、

嫌な思いは、させたくなかった。

同じ、子どもを持つ母として。

 

Sの子どもたちが来ることを知り、会社の新人さんたちも、

ちょっと浮足だっていた。

「え~お子さんって、デスクに飾ってある、あのお子さん

ですよね~。」

「すごっく可愛い~。」

「会いたいな~。」

「会社に連れてきて下さいよ~。」

特に、女の子達は、Sジュニアと、遊びたがっていた。

 

Sは、自分のドンファンっぷりを、カモフラージュにする為か、

はたまた、家族(。・ω・。)ノ♡のアピールの為か、

デスクに、二人の子どもの写真を飾っていたのだった。

いかにも、SのDNAを、受け継いでいると言わんばかりに

そっくりな、その男の子達は、写真縦立ての中で、無邪気に

笑っていた。

 

Sだけでなく、Sジュニアも人気になりそうな気配に、

Mは、慌てたのだろうか・・・。

「私も、会いたいです。」

「会いにいっていいですか?」

と、とんでもないことを言い出した。

 

「いや、ちょっとMちゃん、せっかくの家族水入らず

なんだから、そこは遠慮しといたら・・・。」

 

そんなことを言う、おばちゃんずの忠告など、彼女は

どこ吹く風である。

 

「不味いわね・・・奥様VS愛人対決じゃないの!」

 

女の感は鋭いのだ。

 

どんなにMが、演技派女優だったとしても、ドンファン

妻として、こと女性の匂いには、敏感な筈の奥様が、

見抜けない訳がない。

狐と狸の化かしあいの冷戦か、はたまた、仁義なき

血みどろの闘争となるのか・・・・。

 

まあ、子どもさんも一緒だから、お互い、顔に出す訳

にはいかないだろうけれど・・・・。

 

展示会も、同時進行だったため、信販のTさんにも、この

事情は漏れてしまっていた。

 

「来てるんですってね・・・。」

「そうなのよ。」

「私さ、Mちゃんが、S所長に電話しないかどうか

見張っているのよ。」

「えっ・・・どうやって?」

「Mちゃんと、S所長に交互に電話してるの。」

「仮に、Mちゃんの電話が話し中で、すぐにS所長に

掛けて、電話中なら、二人は、電話しているってことでしょ?」

 

「え~~~~~っ、そんな事してるの!?」

 

Tさんの、何かに憑かれたような情熱に、私は、思わず、背筋が

凍った。

 

「でもさ、奥様も来ている訳じゃない?もしも電話が繋がったら

どうするの? 奥さん、変に思わないかしら?」

「そんな事ないでしょ、だって私、Mちゃんを見張ってあげて

いるんだもの。感謝してもらいたいくらいよ。」

 

あの快活で、豪快なTさんは、どこへ行ったのだろう・・・・。

私の目の前にいるTさんは、もう、全く別人のように

しか見えない。

 

その後も、Tさんの「正義感溢れるストーカー」ぶりは、

次第にエスカレートし、Sの立場を追い込み、尚且つ

取引先とのゴタゴタの末、本社に知られることと

なってしまう。

私が、退職した後も、彼女は、頼まれてもいないSの

行動報告書を、いちいち、私に、送信してきた。

 

いや・・・もう、Sのゴタゴタに巻き込まんでくれ!

 

何度、心から、お願いしたことだろう・・・。

しかし、Sへの執着を、復讐心へと醸成させたTさんには

私の、本心は、届かなかったようだった。