小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉘

結局、Mは、Sの家族が来福中、ぬけぬけと家にまで

押しかけ、逢いに行っていた事が、解った。

しかも、黙っていればいいものを、Mは、その事実を会社で

しかも、新人達が居る前で、喋ってしまった。

 

若い新入生に、Sを取られまいと、釘を刺したかった

のかも知れないが、それは、あまりに愚かな行動だった。

 

会社の大人チームは、Mの大胆不敵な行動に、呆れ、もう

付ける薬は無いな・・・と諦めていた。

 

「子どもたち、二人とも可愛くて、思わず、だっこ

しちゃいました~。

私、あの子たちなら、お母さんになれるかな~って。」

 

(おいおい、あんた、絶対、奥さんにばれてるって・・・。)

 

そんな痛い言動をする先輩なのに、新人後輩達は、あまりに

大人で、切なくなってしまう。

 

「うわ~会いに行ったんですか~、いいな~、私たちも

逢いたかったな~。所長、今度来られたら、絶対、私たち

にも、逢わせてくださいね~。」

 

「う・・うん、解ったよ。」

 

Mにとっては、前門の虎(新人美女軍団)、校門の狼(信販の美人派遣)

って状態で、油断できないから、必死なんだろうけど・・・。

 

いつもは見えてないけど、頭の上に、奥様という、巨象が居るのよ。

大人しく見えても、一旦、暴れると、虎も、狼も、蹴散らされるのよ。

ましてや、白〇〇なんて、一気に踏みつぶされるわよ。

だてに、ドンファンの奥様業を、何年もやってる訳じゃないんだから。

 

何だか、Sの奥さんの事が、他人事とは思えなくて、私も、

一度お会いして、本当の気持ちは、どうなのか、

聞いてみたい衝動に駆られていた。

 

夫の不倫に悩む、人妻同士、案外気があったりしてね!

 

Sが、赴任してすぐ、私に、奥様が住んでいる家の住所と

連絡先を、渡そうとしたことが、あったのだが・・・。

 

「え、渡して大丈夫ですか? 何かあったら、すぐ連絡

入れちゃいますよ~。」と、冗談を言ったら、

「あ、それもそうだな・・・。」って

すぐに、引っ込めた事が、あったっけ・・・。

余計な事言わないで、貰っておけば良かったよ。

 

そうすれば、もうちょっと、堅牢な防波堤になれた

かも知れないのに・・・。

 

奥さんに会ったことで、自信がついたのか、Mの行動は

もはや、誰にも止められないほどの、暴走列車と

化していた。

 

お酒の席で、Sの横にべったりと寄り添い、

「私、肉付きがいいんで、抱き心地がいいんですよ~。」

って、体をくねらしてみたり・・・。

 

(何のアピールやねん・・・)

 

これには、さすがのSも、

「よくそんな事、ここで言うな~・・・引くわ・・・。」

と、驚いていたのだが・・・。

 

もう何でもアリなんやな・・・。

何で、そんなに必死なのか・・・。

 

私たち大人チームの前だけなら、私たちが、胸やけすればいいだけ

の話だったのだが・・・。

 

Mの顕示欲は、もはや、真夏の積乱雲の如く、ムクムクと膨れあがり

新人達はおろか、取引先のベンダーさん達にすら、遠慮しない

状態へと陥っていた。

 

ある展示会でのこと。

 

着物をまだ、着つけていなかったMは、

「所長~、着物着させてくださぁ~~~い。」と大声で

叫びながら、Sを探していた。

それを聞いていた、着つけのプロの女性が、

「何いってるの、はしたない!男の人に着つけてもらう

だなんて。」

「こっちいらっしゃい。着せてあげるわ。」

と、Mの手を引いて、お帳場へと連れて行こうとしたのだが

「私、所長がいいんですぅ~、所長に着せて貰いたいんですぅ。」

と言いながら、着物一式を持って、会場の真ん中辺りで、準備

していたSの元へ、走り寄って行った。

 

Sは、少々呆れながらも、「仕方ないな~、着せてあげるよ」

と言ったのだが、まだ、洋服のままで、襦袢すら着てないM

を見て、「おいおい、ここでストリップでもやる気か!?」

と、さすがにあきれ顔。

 

額に血管が浮かび上がって、怒り心頭な様子の、着付けの先生が

「こっち、いらっしゃい!」と

半ば、強引に、Mの手を引いて、お帳場へと連れ去っていった。

中で、着つけて行きなさい!と、着つけの先生に、再度説得

されていたようだったが、襦袢を着せて貰うやいなや、Mは

着物を、襦袢の上から引っかけて、すぐに、Sの元へと

走り寄ってきた。

 

「所長~、着させてくださ~~~い。」

「全く、しょうがねえなぁ~。」

そう言いながらも、まんざらでもない表情で、着付けを

請け負うS。

 

しかし、そこは会場のど真ん中。

 

SとMを真ん中にして、新人達も、取引先ベンダーさんも、

着つけの先生も、信販会社の女性たちも、取り巻くようにして

二人の、エロス漂う、安っぽいお不倫劇場を見せられているのだ。

 

明らかに軽蔑して睨む顔。

ニヤニヤ笑っている顔。

嫉妬で目の奥の炎が燃えている顔。

見てはいけないものを見せられて、目のやり場に困っている顔。

 

そんな十人十色の顔が、二人を遠巻きに見つめていた。

 

一体、何なんだ! コレは!

 

これから、お客様を迎えるにあたって、皆、緊張し、頑張ろうと

準備をしている最中だというのに・・・・。

 

何のために、私たちは、こんなものを見せられている訳????

 

(せめて、お不倫のイチャイチャタイムは、場外でやってくれ!)

 

当の二人は、そんな大勢の、声なき雑音など、気にする素振りは

全く無かったのだが・・・。

 

(このシチュエーション、痛快TVスカッとジャパンで、再現して

貰って、誰かに、神対応大岡裁きしてもらいたいわ~~~。)

 

残念ながら、その時には、誰も神対応できる人は、出現

しませんでした。

 

さすがの、冷徹おばはんの私も、呆れかえって、

嫌味の一つも言えませんでしたわ。

 

厚顔無恥に付ける薬など、どこにも売ってない!