そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉘
結局、Mは、Sの家族が来福中、ぬけぬけと家にまで
押しかけ、逢いに行っていた事が、解った。
しかも、黙っていればいいものを、Mは、その事実を会社で
しかも、新人達が居る前で、喋ってしまった。
若い新入生に、Sを取られまいと、釘を刺したかった
のかも知れないが、それは、あまりに愚かな行動だった。
会社の大人チームは、Mの大胆不敵な行動に、呆れ、もう
付ける薬は無いな・・・と諦めていた。
「子どもたち、二人とも可愛くて、思わず、だっこ
しちゃいました~。
私、あの子たちなら、お母さんになれるかな~って。」
(おいおい、あんた、絶対、奥さんにばれてるって・・・。)
そんな痛い言動をする先輩なのに、新人後輩達は、あまりに
大人で、切なくなってしまう。
「うわ~会いに行ったんですか~、いいな~、私たちも
逢いたかったな~。所長、今度来られたら、絶対、私たち
にも、逢わせてくださいね~。」
「う・・うん、解ったよ。」
Mにとっては、前門の虎(新人美女軍団)、校門の狼(信販の美人派遣)
って状態で、油断できないから、必死なんだろうけど・・・。
いつもは見えてないけど、頭の上に、奥様という、巨象が居るのよ。
大人しく見えても、一旦、暴れると、虎も、狼も、蹴散らされるのよ。
ましてや、白〇〇なんて、一気に踏みつぶされるわよ。
だてに、ドンファンの奥様業を、何年もやってる訳じゃないんだから。
何だか、Sの奥さんの事が、他人事とは思えなくて、私も、
一度お会いして、本当の気持ちは、どうなのか、
聞いてみたい衝動に駆られていた。
夫の不倫に悩む、人妻同士、案外気があったりしてね!
Sが、赴任してすぐ、私に、奥様が住んでいる家の住所と
連絡先を、渡そうとしたことが、あったのだが・・・。
「え、渡して大丈夫ですか? 何かあったら、すぐ連絡
入れちゃいますよ~。」と、冗談を言ったら、
「あ、それもそうだな・・・。」って
すぐに、引っ込めた事が、あったっけ・・・。
余計な事言わないで、貰っておけば良かったよ。
そうすれば、もうちょっと、堅牢な防波堤になれた
かも知れないのに・・・。
奥さんに会ったことで、自信がついたのか、Mの行動は
もはや、誰にも止められないほどの、暴走列車と
化していた。
お酒の席で、Sの横にべったりと寄り添い、
「私、肉付きがいいんで、抱き心地がいいんですよ~。」
って、体をくねらしてみたり・・・。
(何のアピールやねん・・・)
これには、さすがのSも、
「よくそんな事、ここで言うな~・・・引くわ・・・。」
と、驚いていたのだが・・・。
もう何でもアリなんやな・・・。
何で、そんなに必死なのか・・・。
私たち大人チームの前だけなら、私たちが、胸やけすればいいだけ
の話だったのだが・・・。
Mの顕示欲は、もはや、真夏の積乱雲の如く、ムクムクと膨れあがり
新人達はおろか、取引先のベンダーさん達にすら、遠慮しない
状態へと陥っていた。
ある展示会でのこと。
着物をまだ、着つけていなかったMは、
「所長~、着物着させてくださぁ~~~い。」と大声で
叫びながら、Sを探していた。
それを聞いていた、着つけのプロの女性が、
「何いってるの、はしたない!男の人に着つけてもらう
だなんて。」
「こっちいらっしゃい。着せてあげるわ。」
と、Mの手を引いて、お帳場へと連れて行こうとしたのだが
「私、所長がいいんですぅ~、所長に着せて貰いたいんですぅ。」
と言いながら、着物一式を持って、会場の真ん中辺りで、準備
していたSの元へ、走り寄って行った。
Sは、少々呆れながらも、「仕方ないな~、着せてあげるよ」
と言ったのだが、まだ、洋服のままで、襦袢すら着てないM
を見て、「おいおい、ここでストリップでもやる気か!?」
と、さすがにあきれ顔。
額に血管が浮かび上がって、怒り心頭な様子の、着付けの先生が
「こっち、いらっしゃい!」と
半ば、強引に、Mの手を引いて、お帳場へと連れ去っていった。
中で、着つけて行きなさい!と、着つけの先生に、再度説得
されていたようだったが、襦袢を着せて貰うやいなや、Mは
着物を、襦袢の上から引っかけて、すぐに、Sの元へと
走り寄ってきた。
「所長~、着させてくださ~~~い。」
「全く、しょうがねえなぁ~。」
そう言いながらも、まんざらでもない表情で、着付けを
請け負うS。
しかし、そこは会場のど真ん中。
SとMを真ん中にして、新人達も、取引先ベンダーさんも、
着つけの先生も、信販会社の女性たちも、取り巻くようにして
二人の、エロス漂う、安っぽいお不倫劇場を見せられているのだ。
明らかに軽蔑して睨む顔。
ニヤニヤ笑っている顔。
嫉妬で目の奥の炎が燃えている顔。
見てはいけないものを見せられて、目のやり場に困っている顔。
そんな十人十色の顔が、二人を遠巻きに見つめていた。
一体、何なんだ! コレは!
これから、お客様を迎えるにあたって、皆、緊張し、頑張ろうと
準備をしている最中だというのに・・・・。
何のために、私たちは、こんなものを見せられている訳????
(せめて、お不倫のイチャイチャタイムは、場外でやってくれ!)
当の二人は、そんな大勢の、声なき雑音など、気にする素振りは
全く無かったのだが・・・。
(このシチュエーション、痛快TVスカッとジャパンで、再現して
残念ながら、その時には、誰も神対応できる人は、出現
しませんでした。
さすがの、冷徹おばはんの私も、呆れかえって、
嫌味の一つも言えませんでしたわ。
厚顔無恥に付ける薬など、どこにも売ってない!