小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉙

季節は、夏になっていた。

夏の連休に、みんなで、どこかへ遊びに行こうという

計画が上がっていた。

 

「どこがいいかな~」

「やっぱり、夏だし、海がいいんじゃない?」

「綺麗な海、みた~~~い!」

 

「ねえ、呼子とかどうかな?」

呼子?」

「烏賊が、めっちゃ美味しいよ~。」

Mの提案に、皆賛成して、車で分乗して出かける事

になった。

「まず、人数よね。

車何台いるか、割り振りも必要だし。」

「私たち14人と、M先輩と、所長でしょ・・・。」

 

「瑠璃さん、一緒に行きませんか?」

 

新人の女の子が、私を誘ってくれた。

 

「う~ん、子どもいるから、行けないわ。」

「え~、一緒に連れてきたらいいじゃないですか?」

「でも、うちの子も、私も、車弱いのよね~。」

「え~~そうなんですか・・・。」

「でも、窓全開で走れば、大丈夫じゃないですか?」

 

「ところで、お子さんって、いま、お幾つなんですか?」

「小4よ。」

「男の子ですか、それとも女の子?」

「男の子よ。」

「うわ~逢ってみた~~い。」

「連れてきてくださいよ~。」

「顔見たい~~~。」

「可愛いですか?」

「どうかな・・・写真ならあるけど・・・。」

「え~~~見せて~~~見せて~~~。」

 

女の子たちが、こぞって、小4の息子の写真に群がった。

 

「いや~~~ん、めっちゃイケメンじゃないですか~。」

「うわ~可愛い~~~エプロンしてる~。」

「お料理手伝ってくれるんですか?」

「ああ、それね、親子料理教室へ行った時の写真なのよ。」

「へ~いいな~。」

「私、若かったら、付き合いたい~~~。」

「あははは」

「じゃ、うちの息子が成人するまで、待っててください」

「やだ~おばちゃんになっちゃうじゃん。笑」

 

ひとしきり、盛り上がったのだが、私は、呼子へのドライブ

への参加は、見送った。

若いお兄さんお姉さんと、遊べるのは、いい機会だったかも

しれないが、お調子者の息子が、何か、やらかしては

申し訳ないからね・・・。

 

単身赴任している夫と、仕事をしている私。

 

きっと、遊びたい盛りの息子が、日ごろのうっぷんを

晴らすべく、大はしゃぎするのが、目に見えるようだった。

 

何時ものように、息子と二人だけの休日。

日ごろ出来ない家事を片付け、お昼もすませて、リビングで

ゆったりとしていたその時、電話のベルが鳴った。

 

ファックス電話の表示版は、「公衆電話」と表示されていた。

「公衆電話?」

不思議に思いつつ、私は、受話器を取った。

 

「はい ●●です。」

 

しかし、返答はない。

 

「もしもし、●●ですけど・・・。」

 

やはり、返答はない。

 

受話器に耳を澄ましてみると、遠くに若い人の歓声が聞こえた。

 

ザア~~という波の音も、かすかに漏れ聞こえてくる。

 

電話の主は、相変わらず、息を殺して黙っていたが、

私には、それが誰であるか、もう解っていた。

 

声には、ならなかったが、受話器の向こうの相手の、重苦しい

言うに言えない「辛さ」みたいな感情が、回線を通して

私に伝わってくる気がしていた。

 

私は、無言で、電話の相手と向き合っていた。

何が言いたいのだろう・・・。

何が、そんなに辛いのだろうか・・・・と。

 

ふいに、遠くから、電話の主を呼ぶような声がして

電話は、プツリと切れた。

向こうは、気付いただろうか・・・・。

私が、電話の相手が、誰だかわかっていたことを・・・・。