そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉙
季節は、夏になっていた。
夏の連休に、みんなで、どこかへ遊びに行こうという
計画が上がっていた。
「どこがいいかな~」
「やっぱり、夏だし、海がいいんじゃない?」
「綺麗な海、みた~~~い!」
「ねえ、呼子とかどうかな?」
「呼子?」
「烏賊が、めっちゃ美味しいよ~。」
Mの提案に、皆賛成して、車で分乗して出かける事
になった。
「まず、人数よね。
車何台いるか、割り振りも必要だし。」
「私たち14人と、M先輩と、所長でしょ・・・。」
「瑠璃さん、一緒に行きませんか?」
新人の女の子が、私を誘ってくれた。
「う~ん、子どもいるから、行けないわ。」
「え~、一緒に連れてきたらいいじゃないですか?」
「でも、うちの子も、私も、車弱いのよね~。」
「え~~そうなんですか・・・。」
「でも、窓全開で走れば、大丈夫じゃないですか?」
「ところで、お子さんって、いま、お幾つなんですか?」
「小4よ。」
「男の子ですか、それとも女の子?」
「男の子よ。」
「うわ~逢ってみた~~い。」
「連れてきてくださいよ~。」
「顔見たい~~~。」
「可愛いですか?」
「どうかな・・・写真ならあるけど・・・。」
「え~~~見せて~~~見せて~~~。」
女の子たちが、こぞって、小4の息子の写真に群がった。
「いや~~~ん、めっちゃイケメンじゃないですか~。」
「うわ~可愛い~~~エプロンしてる~。」
「お料理手伝ってくれるんですか?」
「ああ、それね、親子料理教室へ行った時の写真なのよ。」
「へ~いいな~。」
「私、若かったら、付き合いたい~~~。」
「あははは」
「じゃ、うちの息子が成人するまで、待っててください」
「やだ~おばちゃんになっちゃうじゃん。笑」
ひとしきり、盛り上がったのだが、私は、呼子へのドライブ
への参加は、見送った。
若いお兄さんお姉さんと、遊べるのは、いい機会だったかも
しれないが、お調子者の息子が、何か、やらかしては
申し訳ないからね・・・。
単身赴任している夫と、仕事をしている私。
きっと、遊びたい盛りの息子が、日ごろのうっぷんを
晴らすべく、大はしゃぎするのが、目に見えるようだった。
何時ものように、息子と二人だけの休日。
日ごろ出来ない家事を片付け、お昼もすませて、リビングで
ゆったりとしていたその時、電話のベルが鳴った。
ファックス電話の表示版は、「公衆電話」と表示されていた。
「公衆電話?」
不思議に思いつつ、私は、受話器を取った。
「はい ●●です。」
しかし、返答はない。
「もしもし、●●ですけど・・・。」
やはり、返答はない。
受話器に耳を澄ましてみると、遠くに若い人の歓声が聞こえた。
ザア~~という波の音も、かすかに漏れ聞こえてくる。
電話の主は、相変わらず、息を殺して黙っていたが、
私には、それが誰であるか、もう解っていた。
声には、ならなかったが、受話器の向こうの相手の、重苦しい
言うに言えない「辛さ」みたいな感情が、回線を通して
私に伝わってくる気がしていた。
私は、無言で、電話の相手と向き合っていた。
何が言いたいのだろう・・・。
何が、そんなに辛いのだろうか・・・・と。
ふいに、遠くから、電話の主を呼ぶような声がして
電話は、プツリと切れた。
向こうは、気付いただろうか・・・・。
私が、電話の相手が、誰だかわかっていたことを・・・・。