小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉛

Mのあまりに、あざとい「愛人アピール」が、効きすぎたのか

Sが、新人女性達と、必要以上に親しくなれない雰囲気が

生まれつつあった。

 

まあ、大人チームとしては、変に、新人女性に手を出されて

ゴタゴタするよりは、多少目には余っても、Mが防波堤に

なってくれるのであれば、もう、致し方ない事として

目を瞑ろうと、考えるようになっていた。

 

しかし、それでは、Sの狩猟本能が満たされなかったらしい。

 

なにかとMの目を盗んでは、信販の美人派遣社員さんを

口説き落しにかかっていたのだ。

 

最初こそ、甘い言葉を、囁いていたものの、全く、相手に

されなかったSは、とうとう業を煮やし、あろうことか

その美人派遣社員さんに対して、

「デートしなければ、仕事から外す!」

などど、脅してしまったのだ。

 

何をしてるんだ、Sよ!

女性を脅すだなんて、ドンファンの名が泣くぞ~~~。

 

今まで、美人モデルさんやら、美人CAさんやら、周囲が

驚愕するほどの美人と、数多、浮名を流してきたというのに、

「恫喝」してまで、女性と付き合おうだなんて・・・・。

 

磨き上げてきた、ドンファンの手練手管は、

錆びついてしまったのか!?

 

ま、関東の女性は、比較的、雰囲気と、甘い言葉に

弱いのかも知れないけど・・・。

九州の女性は、一本芯が通ってますからね~。

そうそう簡単には、落とせませんけどね~。 (-。-)y-゜゜゜

 

しかし、一度「イエローカード」を突きつけていた、

同じ信販の先輩Tさんは、この事態に、烈火のごとく怒った。

Tさんの、この怒りには、多少、嫉妬も交じっていたかも

知れないが、それよりも、可愛い後輩が、パワハラ・セクハラ

の憂き目に遭っているのを見過ごせないという、

女の心意気の方が、今回は、勝っていたと思う。

 

いくら先輩と言えど、Tさんとて、雇われの身。

取引先のSを、怒らせてしまえば、Tさん自身が、首になる

危険もあるからだ。

 

Tさんは、私の居るお帳場にやってくると、鼻息も荒く

捲し立てた。

 

「もう、今日という今日は、絶対に許せないわ!」

「新人さん、トイレで泣いてたのよ~~~~。」

「いくら彼女が美人で、所長の好みだからってさ、人妻よ!」

「いや、人妻じゃなくったって、嫌だっていっているものを

仕事を干すとか、脅して、デートに持ち込もうとしてるのって

絶対、男として、人間として、許せないわ。」

 

「私ね、もう、自分が、この仕事から外されてもいいのよ。

決心したわ。今日、支社に戻ったら、今回の一件を、上司に

話して、会社として、しっかりと抗議してもらうわ!」

 

あまりの勢いに、狭いお帳場は、熱気が籠りそうだったが、

Tさんの怒りは、至極ご尤もな事なので、私は頷きながら、

傾聴した。

 

「確かに、目に余る酷い行為ね! 

もう、情けないわ・・・・同じ会社の人間として・・・。」

「たださ、もしTさんが、信販会社に戻って、この事を

上司に相談したとして、上司は、ちゃんと動いてくれる?」

信販会社さんだって、お得意さんには、色々言いづらいこと

もあるでしょ? ましてや、セクハラ・パワハラとなれば

言い逃れできないほどの証拠がないと、Sからの反撃に

遭うよ。」

「口説かれている時、録音するとかさ・・・証拠残さないと

Sは、意外と上に信頼されているから、不問に伏されるかも

知れないよ。」

 

「大丈夫よ、私、その口説き文句聞いていたもの。

証言できるわ。」

「そっか~、じゃ、一度、上の人に相談してみて。」

「私も、それとなく所長に、釘刺しておくから。」

「それでも、ダメだったら、もう仕方ないね・・・。」

 

やれやれ、Sの底なしの女癖の悪さのせいで、私は、

自分の仕事以外に、厄介な事を引き受けざるを得なかった。

 

しかし、ここは下手に動くと、Tさんや、新人さんの首が

飛ぶ危険性がある。

上司をものともしない、恐れ知らずの鉄仮面おばちゃんとて

軽々に動くのは、考え物だ。

 

私は、Sに直談判する前に、一計を案じた。