そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊿
Y所長への、手紙には、彼の眠っている正義感を揺り起こす
為に、そして、僅かに残っているだろう、先輩であり、戦友
であるはずの「Sへの買いかぶり」を払拭してもらうために、
情と理を、織り交ぜながら、今までに起こったSに纏わる事件、
私の知り得る、全ての事実を、書き綴った。
Sの目的達成のための、非情さと、傲慢さは、Y所長も知る
ところではあるのだが、Y所長の、人の良さと、優柔不断さと
Sに対する思い入れの深さは、Sの本質を真っ直ぐ見るには
大甘なサングラスとなっていたのだ。
そのサングラスを外して、生の、見たくない、スルーしたい
Sの本質を見、そして、それと向き合って、尚且つ、若き新人
さんたちを、Sの毒牙から、守って貰わねばならないのだ。
私が、この職場を去る以上、Sと対等に渡り合い、戦っていける
のは、もうY所長しかいないのだ。
Sが、福岡店の所長として赴任すると決まった時の事だった。
Y所長は、私に、Sの武勇伝を聞かせてくれたことがあった。
その武勇伝は、男性同士の話なら、拍手喝さいを持って
盛り上がる、格好の酒のつまみには、なったかも知れない。
しかし、女性である私にとっては、眉を顰めるしかない、
聞くに堪えない、恋愛中毒患者の与太話にしか
聴こえなかった。
とにかく、街ですれ違おうが、電車で乗り合わせようが、
たまたま出張中に、機上でであった客室乗務員であろうが
Sは、アンテナに引っかかった女性という女性に、果敢に声を
掛け続け、とにかくデートに持ち込むという荒業の持ち主
だったのだ。
(そうそう、昔あったよね~。妖精みたいな純粋で
可愛い彼女とデートの最中、8歳も年上のお姉さまに、声を掛け、
無理くり写真を撮って、大目玉くらったこと!)遠い目(=_=)
しかし、そんなSの高度なナンパ技術と、テクニックに、実は、
Y所長は傾倒し、むしろ崇拝していた節があるのだ。
Y所長は、確かにSとは対照的で、恋に奥手な部分は
あったのかもしれない。
しかし、そんなナンパな男を、普通なら軽蔑し、冷ややかな
目でみても不思議ではないというのに、Y所長が語るSの
武勇伝には、愛しい人を語るような、夢見る遠い目つきと
尊敬の念が、入り混じっていたのだ。
しかも、Y所長は、こう言ったのだ。
「いや~、俺も女だったら、一度抱かれてみたいかな。」
(げっ、まじか~~~~)('Д')キモイ~
「いや、男としてでもいいな・・・もしも、S所長に
●●●出せって言われたら・・・・ピー音発令中
・・・しちゃうな~~~~。」
(過激につき、表現を自粛させて頂きます。)
何だか、実際、そんな事があったんじゃ・・・・と
ついつい、疑ってしまいたくなるほど、Y所長のSに
対する「思い」は、特別だったのだ。
しかし、Y所長も結婚し、子どもも授かったことで、
家族が第一となり、現実を見ることができたのでしょう。
「おれ、もう昔みたいに、S所長が、手を出した女に
因果を含めて、別れさせる手伝いなんてしないから!」
「色々女に手を出すのはいいけど、すぐに放置して
次に行くからさ、結局俺が、いつも後始末させられる
羽目になってたんだよ!」
思わぬカミングアウトでしたが、確かに、Sにとっては
使い勝手の良い、後輩だったに違いありません。
確かに、家族は大事です。最優先してもらいましょう。
でも、その次ぐらいに大事にしてほしいのが、新人さん
達でした。彼らの真面目な情熱と、仕事に対する真摯な
姿勢を、決してSの私利私欲と、酒池肉林の為に、汚して
貰っては困るのです。
そこで、去り行く私が、仕組んだ手紙。
どれほどの効力を保ち、どれほどの時間稼ぎが
できるのか・・・。
問題は、Sへのアプローチでした。