小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その53

Sの気持ちを、上げるだけ上げて、長い手紙の最後まで

読んで貰わなくては、私の「策略」は、失敗するのだ。

 

さりとて、浮っついた表面的な美辞麗句だけでは、Sの

心を動かすことなど、出来る筈もない。

 

Sに対する「真摯なお願い」編の手紙は、本当に、心を

込めて、私が見つけた、Sの数少ない美点を並べ、

最大限に、褒めちぎった文章がメインとなった。

 

まあ、こと仕事に関しては、S本人も、「俺って仕事できる

じゃん!」という自負は、少なからずあったとは思うのだが

なにせ、例のセクハラ・パワハラで、打ち消され、誰かに

誉めてもらうことなど、あまり無かったと思われるのだ。

 

以外に、「誉められる」ってことは、Sにとっても、

新鮮な出来事だったかもね!

 

Sの後輩指導の手腕を、褒めちぎり、いつまでも、慕われる

「良き先輩」「良き上司」でいて下さい・・・・という

下りは、まさに、私の祈るような願いのこもった一文だった。

 

まあ、生憎、美点を、それしか見つけられなかったからね~。

なので、言葉を変え、表現方法を変え、繰り返し繰り返し、

Sの潜在意識に訴えるべく、手紙を綴ることになった。

 

誉められて気持ちがアゲアゲになったところで、

肝心の、本題に入るのだが・・・・。

 

Sのパワハラと、セクハラを防いで貰うY所長との関係。

 

まだ、Sの洗脳から抜け切れていないY所長に、目覚めてもらう

為に、Y所長には、Sの悪行三昧を書き連ね、新人さんを守って

くれるよう、情に訴えたのだが・・・。

 

SとY所長が、なあなあに戻らない為にも、私は、Sへの手紙にも

楔を打ち込んだのだ。

 

Y所長は、お人好しで、情に脆い人ではあったのだが、残念な事に

とても猜疑心の強い人間でもあった。

新人さんが入社する前、福岡支店の立ち上げ時に、年配の灰汁の

強すぎる営業レディを、纏めあげることができず、本来なら

事務方でスクラムを組んで、勧めて行かねばならない事も、

営業レディに忖度するために、ないがしろにしてきたのだ。

 

会社の規定をも無視し、(あれ、Sの悪い習慣受け継いだ!?)

自分の安い給与から、身銭を切って、営業レディに貢いだり、

一筋縄ではいかぬ古老の営業レディボスの、いいなりになって

事務方の立場を上げたり下げたり・・・。

 

ひいては、何か、そのボスに、良からぬことを耳打ちされたのか

私を試す、姑息で、地味な策略を仕掛けてきたりしたのだ。

私は、Y所長が、そこまでするような人間とは思っていなかった

ので、正直、その策略に気づいた時には、愕然としたのだった。

 

事務所の運営のための、「手許金」。

営業のガソリン代やら、出張費やら、事務用品代やら、毎日

細かく出て行くのだが、私は、前職で、同じような仕事を

やっていたこともあって、毎日、しっかりと帳簿と合わせて

いた。

しかし、ある時から、ホントに、数円、数十円の単位で、金額

が、狂いだしたのだ。

最初は、私の数え間違いか、誰かが、勝手に両替をして、計算

が合わなかったのかと思っていたのだが・・・。

減るだけではなく、増えることもあり、さすがに、これは

可笑しいと思い、Y所長にも、それとなく訊ねてみたのだが、

誰も、金庫は触っていないと言うのだ。

 

「このお金、どうしましょうか?」

数十円、帳簿より多めの現金となった時に、Y所長に訊ねたのだが

「原因が、はっきり判るまで、封筒にでも入れて、別に保管して

おけば・・・。」という、指示だったので、それに従い、釈然と

しないまま、私も金庫の奥に、封筒に入れて放置することに

なった。 

 

誰も触らぬ筈の金庫のお金が、増減する!?

奇々怪々な話だ!

 

それと並行するように、何故かY所長が、「もしかしたら

ウチの社長が、来福するかもしれないよ~。」などど

言い出したのだ。

かねてから、豪快で知られる社長に、一度お会いしてみた

かった私は、それを真に受けて、「楽しみですね~。」

と言っていたのだが、しかし、いつまで経っても

社長が、来る気配はなかった。

 

これは、Y所長が、営業レディの大ボスに、良からぬことを

耳打ちされて、私を嵌めるための、小銭紛失作戦だったのだ。

社長が来る!というのは、私が、お金を誤魔化しているのが

バレルよ~~という、注意喚起の積りだったのかも

知れない。

しかし、当の私は、そんな事してもいないし、想像すら

していないから、Y所長も、社長ウエルカムな感じの

私に、???が止まらなかったのかも知れないが・・・。

 

「あの事務員、お金誤魔化しているんじゃない?」とでも

大ボスに、言われたのだろうか・・・。

事実、心ある営業レディの一人が、「貴方をを辞めさせ

ようと、営業レディの大ボスが、画策している」と、

こっそりと教えてくれたので、私も、はたと気づいたのだが。

 

営業レディの大ボスに、いい様に扱われ、見下げられていた

Y所長を、何とか支えてきた積りの私にとって、このY所長の

裏切りは、怒りが湧くというより、情けない気持ちの方が

先に立ったのだった。

 

しかし、福岡支店を恙なく回していき、Sのパワハラ・セクハラを

発動させないためにも、Y所長の悪行を、今明らかにして、

追及するのは、得策ではなかったのだ。

 

なので私は、その時は、天然ちゃんを装って、Y所長の策略なんて

これっぽっちも、気付いてませ~~んって体で、

過ごしていた。

 

しかし、その事実をリリースする、千載一遇の時が、

今まさに来たのだ。

 

そう、SとY所長との間に、楔として打ち込むリーサルウエポン。

 

それこそが、Y所長が、私を試すために仕込んだ、

数十円の硬貨だ!

 

手紙に入れた金属製の鍵。

 

おそらく、Sが、そう勘違いした金属こそ、その硬貨

なのだ。

二通目の手紙には、Y所長が、私に仕掛けた姑息な

お試しの策略と、大ボスの悪行を、つぶさに書いた。

 

女性には、だらしないSだが、おそらく、この一件は

彼の逆鱗に触れたように思う。

 

勿論、Sとて、策士。

 

Y所長に、直接確認などは、しなかっただろう。

 

しかし、、この、たった数十円の硬貨は、SとYとの間に、

確実に、冷たい隙間風を吹かせたに違いない。

もしかしたら、私の本当の退職の理由は、コレでは

ないのか・・・と、Sは思ったかも知れない。

 

まあ、そんなことで辞めるほど、私は軟ではないのだが。

 

このリーサルウエポンは、私の思う以上に、二人の間に

楔を打ち込んでしまったことに、あとで私は、気付かされる

事になる。