小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その55

夕暮れの街を、花束を抱えながら、歩く私。

この通いなれた通りも、地下鉄の駅にも、来ることは

もう、無いのかもね・・・・。

 

そんな、ちょっとセンチな気分で、電車に揺られていた。

夕方のラッシュのはしりで、少し込み合って来た車内では

定年退職でもなく、もちろん、寿退職でもなさそうな、

微妙な年齢の女性が、大きな花束を持っているのは、

少しばかり一目を引くのだろう。

時折、好奇心に満ちた目線を、感じることがあった。

 

「まあ、人生いろいろ」

 

目線の主達に、心の中で応えながら、私は、相変わらず

平静を装っていた。

 

本当は、凄く、心の中が、空っぽになっていくようで

夕暮れの風景と、相まって、さみしさが溢れてきそうだった。

 

これから、どうする・・・・私。

 

勿論、子どもの学校のPTA役員としての役目は、待ち受けている。

でも、それだけでは、何かが、足りない気がしていた。

 

もう少し、融通の利く、パートを探そうか・・・・。

時間の短いパートなら、両立できそうだし・・・。

 

落ち着いたら、ハローワークに通って、また仕事探し

しようか・・・・。

 

 

家に辿り着き、大きな花瓶に、頂いた花束を飾った。

 

「綺麗だね~、会社の人に貰ったの?」

無邪気に聞いてくる息子。

「そうよ、綺麗でしょ?」

「明日から、もう会社行かないの?」

「そうよ、もう、会社は行かないわ。」

「そっか。」

 

何だか、安堵したような息子の声に、これで良かったんだ

と、自分自身に納得させる私が居た。

 

しばらく、このままでもいいか・・・。

 

PTAの役員の仕事によっては、かなり時間を取られると

聞いているし・・・。

 

Sとの激闘に、身も心もクタクタだしね~。(笑)

 

これでやっと解放されるんだもん。

休んでも、バチは当たるまい!

 

若い新人さんとの別れは、寂しかったが、あの極悪

女ったらしと、やっと、これで縁が切れるではないか!

 

そう、目出度いのだ!

 

心に、40%のアンニュイと、60%の安心感を

抱えて、少しばかり揺れていた私の気持ちだったが、

最後に、安心感に軍配が、上がったのだった。

 

やっと、安寧の毎日が送れる!

そう思うと、笑みがこぼれてきた。

 

イライラしなくていい毎日!

Sに振舞わされることのない日々。

 

そう、私は、そんな「しあわせ溢れる日々」を

思い描いて、安堵した。

 

そんな安堵が、いとも容易く吹き飛ぶなんて・・・。

 

この時の私には、そんな近未来を思い描くことなど

到底、できはしなかったのだ。