小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉞

他県の所長さんたちから、叱られるわ、大人しいと思っていた

おばちゃん事務から、啖呵を切られるわで、Sとしても、

ちょっと考えるところがあったのか、しばらくの間は、

大人しい状態が続いた。

 

信販のTさんも、ほっと胸を撫でおろしていたのだが、

実は、これはフェイクな静寂に過ぎなかったのだ。

 

反省していると見せかけて、時間を稼ぎ、Sは、その間に

私たちが考えもしない策に打って出たのだった。

 

人手が足らず、お客様に、十分な対応が出来なかった時代から

当社の社員でもないのに、何くれとなく、心を砕いて、親身に

なって動いてくれた、信販のTさん。

それなのに、彼女の「厳しい目」があるから、新人の美人

派遣社員さんに近付けないと思ったのだろうか・・・。

 

こともあろうに、Tさんを、担当から外すように、信販会社の

上役に、こっそりと、裏から働きかけていたのだった。

 

そして、次の展示会には、まんまと、美人派遣社員さんと、

別の新人派遣さんを、手配させる事に成功したのだった。

 

しかし、慣れない二人では、信販の契約事務ですら、色々と

手違いが起こり、お客様に、ご迷惑をかけることに

なってしまった。

 

「何で、Tさんが来なくなったんですか?」

 

「いや、別にいいだろ、実際、オバちゃんより、若い子の方が

ずっと明るくなって、いいだろ?」

 

「そう思っているのは、所長だけですよね?」

 

「実際、彼女達の本来の仕事である、信販の契約すら、ちゃんと

出来ていない状況ですけど?」

「今まで、Tさんは、自分のお仕事は、もちろんのこと、

私たちの手に余る仕事まで、自ら、進んで手伝って下さって

いました。そのお陰で、今まで展示会もつつがなく、運営できて

いたんですよ。」

「Tさんに、何の落ち度も無かったのに、いきなり来なくていい

って、良く言えましたよね!」

 

「今は、若い子も、沢山居るじゃないか! 助けが欲しいんなら

若い子に言えば、いくらでも手伝ってくれるさ!」

 

全く意に介さないSに、イライラする私。

 

(てめ~っ、人の誠意を何だと思ってやがるんだ~~っ!)(; ・`д・´)

 

若い派遣さん二人に、顔も綻ぶS。

それぞれ別個に、デートの誘いをかけるS。

 

 (もはや、呆れて言葉もない)

(お前の辞書には、分別て、二文字は無いのか~~!) 

 (# ゚Д゚)♯ 大バカヤロ~~~

 

「ちょっと聞いてよ~~~~。」と

仙台の同僚に掛ける電話の回数も、当然のように増えた。

この腹だだしさと、虚しさは、経験した者同士でしか

共感できないからだ。

 

「一体、どうしたらいいんだろう・・・。」

 

もう無策状態に陥る私。

 

正義の味方Tさんを失って、お先真っ暗状態になって

しまった。

 

ここぞとばかり、我が世の春を楽しむ、やりたい放題のS。

 

しかし、ついに、美人派遣社員さんの堪忍袋の緒が切れる

時が来た。

彼女は、自ら、上司に、今までの顛末を話し、退職する旨を

告げたのだった。

この事態を、重大に捉えた信販会社の上司は、うちの本社に

対し、文書で、Sの行状を訴えたのだった。

これには、さすがの統括部長も、無視は出来ず、直接福岡

支店に、電話を掛けてきた。

 

「一体、どうなってるんだ! 信販会社から、物凄いクレーム

が来たんだぞ!」

「君がついていながら、何してるんだ?」

 

(はあ? 何いってるんだハゲ! 私は、Sの妻でも、愛人でも

上司でも、監視係でも何でもないんだぞ~~~何なら部下だわ!

Sのだらしなさの責任なんか、一mmたりと取れるか!)

 

そう言ってやりたい気持ちを抑えつつ・・・・。

 

「部長、パートの事務の、おばちゃん如きの小言で、所長が

大人しくなるとでも、お思いでしょうか?

もし、そのような真摯な方でしたら、あちこちの営業所で、

武勇伝が生まれたりしないでしょう?」

「ここは、やはり、直接部長の方から、ガツンと所長に

言って頂くのが一番かと・・・。」

 

「うん・・・まあ、それもそうだな・・・。」

「Sは、今居るのか?」

「はい、お電話お替り致します。」

「所長~統括部長から、お電話入りました~。」

バルコニーで、たばこを吸っていたSに、私は

電話を取り次いだ。

 

暫く、話し込んでいた二人だったが、どう丸め込んだのか

結局、Sにお咎めは無かったようだった。

 

一体統括部長は、Sにどんな弱みを握られているのだろう・・・。

そう思わせるほど、統括部長のSに対する態度は、いつも

弱腰だったのだ。

 

さては、綺麗どころ、斡旋したね・・・・。

 

統括部長も、頼りにならないとすれば、一体何を武器に

戦っていいのやら・・・。

 

新人の信販社員さんとも、デートが取り付けられなかった

Sは、とうとう、その信販会社との契約さえも打ち切った。

 

「所長、何考えてるんですか!」

 

「あちらの信販会社さんとは、長いお付き合いもありましたし

色々、便宜を図って頂いてきました。」

「ご年配のお客様が多い、うちの会社では、審査が厳しいと

信販契約すら、結べないんですよ!」

 

信販会社なんて、いくらでも代わりがあるじゃないか!

もう既にN信販には、話を通してあるから、心配しなくても

困らないから。」

 

(てめ~~っ、信頼関係って、そう簡単には築けないってこと

知らないのか~~~~~。 ゼイゼイ)

 

この頃になると、信販会社だけでなく、商品を提供してくれる

ベンダーさんとも、大いに揉める事態に陥っていた。

 

もう展示会自体が、大ピンチに陥りそうになっていた。