小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉚

連休明けの社内では、和気藹々と、呼子ドライブの話題が

盛り上がっていた。

 

呼子の烏賊、美味しかったね~。」

「初めて食べたけど、感動したわ~。」

「ビーチボールも、めっちゃ盛り上がったね!」

「何か、みんな、めいっぱい、はしゃいじゃったよね~。」

「ほんと、楽しかった~~~。」

 

「でも、一番、楽しんでて、若いな~って思ったのって・・・。」

 

「所長!」

 

異口同音に、答える新人達。

 

「そうそう、服着たまんま、海へ走り出したんで、びっくり

したよね~。」

「他の男子も、ちょっとつられて、海入ってたね~。」

「なんかさ~、高校生みたい。」

「青春(あおはる)かよ~~~~。」

 

新人たちの、そんな話を、楽し気に聞いていた、大人たちだったが、

おもむろに、営業のおばちゃんが、一言。

 

「まるで、青春群像みたいだったわよ!」

「若い教師と、その教え子みたいな・・・・。」

 

「え~っ、一緒に行ってたの?」

思わず、その事実に、びっくりした私。

 

「あなたも、来ればよかったのよ~。」

 

「そうね、次回があれば行くわ。」

 

そんな気もないくせに、一応忖度してみた。

 

「ところで、所長、皆が浜辺で、ビーチボールしていた時

誰かに、電話してませんでしたか?」

 

「誰に、電話してたんですか?」

 

「う・・・うん、ちょっとね・・・。」

 

Sは、急に、思わぬことを聞かれて、答えを濁した。

まさか、公衆電話で、電話を掛けている自分の姿を、

他人に見られていたとは、思わなかったのだろう。

 

「あ~~~、さては、ご家族が恋しくなって電話

してたんでしょ~。」

 

「まあ・・・・ね。」

 

私は、新人たちの、急な質問にも、Sのしどろもどろの

答えにも、顔色一つ変えずに、平静を装った。

 

やはり、Sだったか・・・・と、心の中では、「正解」

のピンポンが、鳴ってはいたのだが・・・。

 

Sが、私に、無言電話を掛けてた・・・なんて事実は、

新人達にも、会社の大人チームにも、ましてや、

当の、私本人には、絶対、知られたくない事だろうと、

思ったからだった。

 

どんな動機で、どんな思いで、電話を掛けていたとしても、

自分の弱みは、絶対、人には見せたくない!

 

これは、残念ながら、ドンファンなSと、冷徹おばちゃんの

私の、唯一の共通点だったかも知れない。

 

年齢も、性別も、生き方も、真逆な二人だったが、

ツインソウルたる「片鱗」が、この可愛げのない

 

「自分の弱みは、絶対、人には見せない」

 

というポリシーだったことに、私は、少しばかり

先に、気付いていたのかも知れない。

 

案外、私の方が、Sよりも一枚上手の「食えない奴」

だったかもね!(爆)

 

ドンファンな下心を隠しつつも、ちょっと危なげな色気を

漂わせつつも、ギリギリ「青春群像の若き教師」のままで

留まって居てくれさえすれば・・・・。

 

鉄仮面で、何を考えているか解らん、おばちゃん事務も、

きっと、Sの不都合な真実を、そっとオブラートに包んで

それなりに、有能な右腕で居られたに違いないのだが・・・。

 

あの頃の私は、そう、切に願っていた。

 

そんな願いが、すぐに絶望に変わってしまうとも知らずに・・・。