小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊹

以外に短い話し合いだったからだろうか・・・。

新人さんたちは、私とSとの会談の内容が

気になっているようだった。

 

「何話していたんですか?」

「うん、ちょっとね~ひ・み・つ。」

「え~~ずるい~~~教えて下さいよ~。」

「そのうち、解るからっ♡」

 

暗黙の了解のように、「私の退職」は、退職間際

ギリギリまで隠されていた。

 

退職する日の終礼まで、Sは、その事に全く

触れなかった。

あまりにギリギリだったので、ひょっとして、私は

誰にも挨拶することもなく、静かにフェードアウト

しなくてはいけないのかも・・・と思った程だ。

 

逆らう奴には、トコトン厳しいのが、Sの性分なんだ

ろうな~と、思いつつ、策士の私は、淡々と、最後

の日に向けての、準備を始めていた。

 

残される新人さん達へ、私が、最後にできること。

そして、Sに特大の楔を打ち込んでおく為の

秘密兵器。

 

 The last of the wedge

 (リーサルウエポンか!)

 

年上の営業のおばちゃんには、早々に打ち明けていた

ので、私の退職を知っているのは、SとY所長と、

そのおばさん3人だけだった。

 

「ちょっと、あなたが辞めたら、この会社、

めちゃくちゃになっちゃうじゃないの~。

きっと、立ち行かないわよ!」

「坊ちゃんの事、心配だとは思うけどさ、何とか

思い直すことはできないの?」

 

「ごめんね~。最後まで、出来る限りの事は

していくから。」

 

毎晩、徹夜しながら、私は、その準備に、取り組んだ。

全身全霊を傾けて、その準備に只管取り組んだのだ。

去り行く私から、皆に向けてのプレゼント。

何故か、その準備をする時間は、私にとって、

とても充実した「幸せな時間」だった。

 

退職すると告げてからも、Sも私も、表面上は、全く

普段通りに過ごした。

そのせいか、新人さんの中には、退職の当日になって、

やっと、その事実を知った人も居たくらいだった。

新人の何人かは、数日前に、気付いた人も

いたようだったが・・・。

 

相変わらず、冷戦状態の、Sと私だったが、奇妙な

変化が、Sに感じられるようになった。

男女の恋の整理整頓は、苦手なのだが、机上の整理整頓は

いつも、きっちりとしているS。

 

しかし、最近になって、机の上がメモで、大渋滞を

起こしていた。

必要事項や、連絡メモなどを、Sの机上に、皆が張っていく

のだが、毎回Sは、メモを読み、要件が終わると、さっさと

ゴミ箱に捨てていた。

 

しかし、何故か、メモを読み、処理してある印の斜線が

引いてあるにも関わらず、メモを貼ったままに

していたのだ。

 

「所長、すみませんが、新しいメモを貼る場所がありません

ので、古いメモは、処分していただけますか?」

 

あまりの事に、そう言うと、

 

「あ、解ったよ。」と言いつつ、捨てるでもなく、

机の隅の方に、纏めて貼り重ねていくのだ。

 

この異常事態に、新人さんも、訝しい様子で、Sを見ていた。

「何で、捨てないんですかね・・・。」

「さあ・・・。」

 

そんな視線に気づいたのか、ある日、綺麗に、机上が

片付いていた。

しかし、よく見ると、机の袖の引き出しに、その

机上にあったメモが、ゴッソリ貼り付けて

あるではないか!

 

「捨てられないんじゃない?名残惜しくて・・・。」

 

と、それを見たY所長が、呟いた。

「そのメモ、全部、瑠璃さんが書いた奴だけだろ?」

 

「え?そうですか・・・?」

 

袖に張り付けてあるメモを、ハラハラとめくってみると、

確かに、そこにあったのは、私の筆跡ばかり。

 

(「あら、可愛いとこあるじゃん!」)(^_-)-☆

 

私は、思わず、心の中で、笑ってしまった。

 

なんだかんだ言っても、いざ、史上最強の喧嘩相手が

居なくなると思うと、急に寂しくなったってとこか!?

 

さもありなん。

 

一部上場の会社社長すら、丸め込み、統括部長も、

経理部長も、へのかっぱ。

CAさんも、モデルさんも、多くの美女達も、自分の

一言で、靡かせてきたというのに・・・。

 

この、鉄仮面オバちゃんだけは、似ても焼いても食えぬ!

何を言っても、靡かなければ、何をしてもヘコたれずに

正々堂々(?)立ち向かってくる。

 

可愛さ余って憎さ100倍!の逆を行く、

まさかの・・・・・

憎さ有り余って、ちょっと愛しくなってきたとか!!(爆)

 

まあ、それは冗談だが、ここまで戦い甲斐のある相手も

なかなか、居なかったんでしょうなぁ~。

 

これこそが、ツインソウルの醍醐味というもの

かも知れない。

 

相手に、一番言いにくい事を言う、一番嫌な事をやる、

一番手厳しい存在。

 

そして、相手を映す「鏡」のような存在。

 

私たちは、完膚なきまでに、その仕事を

やり遂げようとしていたのかも知れない。