小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊱

展示会用の、様々な商品を用意してくれていた、お馴染みの

ベンダーさんたちが、強引で、傲慢なSを見限り、福岡で

行われる展示会への参加を、見送ることが多くなっていった。

 

Y所長や、私は、今までのベンダーさんに、何とか思い直して

くれるように、電話でお願いしてみたのだが、

「あんな奴と、一緒に仕事なんかできるか!」と

一刀両断されることも、少なくなかった。

 

さすがに、Sも焦ったのか、今までにない商品を扱うベンダー

さんを探し出し、誘致することに腐心していた。

本来、着物や、宝飾品がメインの展示会だったのだが、

ゲルマニウムの商品やら、健康食品まで並ぶようになった。

日ごろから、取引のないベンダーさんとは、仕入れ価格や、

振込日なども、改めて決めなければならないことも多く、

勢い、私の仕事も増えて行った。

 

信販さんを変え、ベンダーさんも変え、何とかかんとか

開催された、やっつけ仕事の展示会だったのだが、

目新しさが当たったのか、何時になく、売上が多くなり、

Sは、上機嫌だった。

 

お帳場で、最終日の〆をしている私の横で、電卓を叩いては、

ご満悦なS。

しかし、私は、どうしても計算が1000円合わなくて、

四苦八苦していた。

 

「え、何、千円少ないの?」

「いえ、多いんです。」

「じゃ、いいじゃん。」

「いえ、そういう訳には、いきません。伝票と収支が

合わなければ、〆るに締められません。」

「何だよ、そんな堅い事言うなよ~。たかが1000円

じゃないか!」

「そういう訳には、行かないんです、経理なんですから!」

 

「千円ってことは、考えられるのは、帯締め

預かり金とかだな。」

「多分、そうだとは思うのですが、入金の伝票がどこを

探しても見つからなくて・・・。」

 

お帳場に、二人っきりで籠っていたからだろうか・・・。

 

薄い仕切りの板の向こうで、新人さんたちの賑やかな声が

聞こえていたのだが、しびれを切らして、

 

「まだですか~。」

「二人っきりで、一体、何をしてるんですか~。」

「ヒュ~ヒュ~」

 

薄い仕切りを、叩きながら、揶揄う声も聞こえてきた。

 

仕切り越しに、「あ~解った、解った、もうすぐだからさ~

壁叩くなよ~。」

そう叫びながら、相変わらず、出ていく気配のないSに、

ちょっと私は、イライラしていた。

 

「所長、みんなと同じところで、待ってて頂いていいですか?

気が散りますので・・・。」

 

「ああ、気にするな~。打ち上げのことで、

みんな、気もそぞろなんだよ。」

 

(いや、そういう事じゃなくて!)(; ・`д・´)

 

「何回やっても合わないなら、もう諦めて、〆たら?」

「明日、改めて、皆に聞いてみればいいさ。」

 

確かに、この狭いお帳場で、これ以上、Sと一緒にいるのは

限界だった。

 

私は、しぶしぶ後片付けに入った。

Sは、意気揚揚と皆の待っているロビーへ出て行った。

 

「今日は、頑張ったな~。荷物を引き上げて、簡単に片づけたら

打ち上げ行くか~。」

 

「わ~い。」

「やった~~~~。」

「所長のおごりですよね~~~。」

「ひゃっほ~~~~っ」

 

翌日になって、例の1000円の犯人が解った。

愛人のMが、入金の伝票を切っていなかったため、

計算が、合わなかったのだ。

私が席を外していた時に、お金だけ金庫に入れて

そのままにしていたらしい。

 

おいおい、君のお陰で、お帳場ランデブータイムが

発生しちゃったわよ!

ああ~~~あ・り・が・と よっ!!  (。-`ω-)

 (嫌味100%増し増しで・・・・)

 

頼むから、二度と間違わんでくれ~~~。  

 

空気を読まないSとの、閉所缶詰は、ダメージ大きいわ!

 

閉所缶詰も、しんどかったが、売上が上がってしまったことで

ますます、Sの独壇場となり、誰も、意見が言えない雰囲気に

陥って行こうとしていた。

 

S所長とY所長との溝も、ここから、さらに深くなっていく。

 

ここまでは、一緒に展示会を開催していたのだが、これ以降

それぞれの所属するチーム別に、展示会を開く形に

移行していくのだ。

 

このことが、またSと私との、第二の闘争の火種となって

行くのだった。