そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊱
展示会用の、様々な商品を用意してくれていた、お馴染みの
ベンダーさんたちが、強引で、傲慢なSを見限り、福岡で
行われる展示会への参加を、見送ることが多くなっていった。
Y所長や、私は、今までのベンダーさんに、何とか思い直して
くれるように、電話でお願いしてみたのだが、
「あんな奴と、一緒に仕事なんかできるか!」と
一刀両断されることも、少なくなかった。
さすがに、Sも焦ったのか、今までにない商品を扱うベンダー
さんを探し出し、誘致することに腐心していた。
本来、着物や、宝飾品がメインの展示会だったのだが、
ゲルマニウムの商品やら、健康食品まで並ぶようになった。
日ごろから、取引のないベンダーさんとは、仕入れ価格や、
振込日なども、改めて決めなければならないことも多く、
勢い、私の仕事も増えて行った。
信販さんを変え、ベンダーさんも変え、何とかかんとか
開催された、やっつけ仕事の展示会だったのだが、
目新しさが当たったのか、何時になく、売上が多くなり、
Sは、上機嫌だった。
お帳場で、最終日の〆をしている私の横で、電卓を叩いては、
ご満悦なS。
しかし、私は、どうしても計算が1000円合わなくて、
四苦八苦していた。
「え、何、千円少ないの?」
「いえ、多いんです。」
「じゃ、いいじゃん。」
「いえ、そういう訳には、いきません。伝票と収支が
合わなければ、〆るに締められません。」
「何だよ、そんな堅い事言うなよ~。たかが1000円
じゃないか!」
「そういう訳には、行かないんです、経理なんですから!」
「千円ってことは、考えられるのは、帯締めの
預かり金とかだな。」
「多分、そうだとは思うのですが、入金の伝票がどこを
探しても見つからなくて・・・。」
お帳場に、二人っきりで籠っていたからだろうか・・・。
薄い仕切りの板の向こうで、新人さんたちの賑やかな声が
聞こえていたのだが、しびれを切らして、
「まだですか~。」
「二人っきりで、一体、何をしてるんですか~。」
「ヒュ~ヒュ~」
薄い仕切りを、叩きながら、揶揄う声も聞こえてきた。
仕切り越しに、「あ~解った、解った、もうすぐだからさ~
壁叩くなよ~。」
そう叫びながら、相変わらず、出ていく気配のないSに、
ちょっと私は、イライラしていた。
「所長、みんなと同じところで、待ってて頂いていいですか?
気が散りますので・・・。」
「ああ、気にするな~。打ち上げのことで、
みんな、気もそぞろなんだよ。」
(いや、そういう事じゃなくて!)(; ・`д・´)
「何回やっても合わないなら、もう諦めて、〆たら?」
「明日、改めて、皆に聞いてみればいいさ。」
確かに、この狭いお帳場で、これ以上、Sと一緒にいるのは
限界だった。
私は、しぶしぶ後片付けに入った。
Sは、意気揚揚と皆の待っているロビーへ出て行った。
「今日は、頑張ったな~。荷物を引き上げて、簡単に片づけたら
打ち上げ行くか~。」
「わ~い。」
「やった~~~~。」
「所長のおごりですよね~~~。」
「ひゃっほ~~~~っ」
翌日になって、例の1000円の犯人が解った。
愛人のMが、入金の伝票を切っていなかったため、
計算が、合わなかったのだ。
私が席を外していた時に、お金だけ金庫に入れて
そのままにしていたらしい。
おいおい、君のお陰で、お帳場ランデブータイムが
発生しちゃったわよ!
ああ~~~あ・り・が・と よっ!! (。-`ω-)
(嫌味100%増し増しで・・・・)
頼むから、二度と間違わんでくれ~~~。
空気を読まないSとの、閉所缶詰は、ダメージ大きいわ!
閉所缶詰も、しんどかったが、売上が上がってしまったことで
ますます、Sの独壇場となり、誰も、意見が言えない雰囲気に
陥って行こうとしていた。
S所長とY所長との溝も、ここから、さらに深くなっていく。
ここまでは、一緒に展示会を開催していたのだが、これ以降
それぞれの所属するチーム別に、展示会を開く形に
移行していくのだ。
このことが、またSと私との、第二の闘争の火種となって
行くのだった。