小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その⑧

Sが、北関東営業所での引継ぎを終わらせ、正式に

福岡へと赴任してきた。

それまで福岡の所長だったYは、一端、Sの部下となり

係長職へと降格された。

 

どうやら、この人事は、Sを高く評価している統括部長の

差し金のようだった。

 

Yは、確かに、営業レディ達の人選を誤り、自分の手に負えない

とんでもない人たちを、入社させてしまっていた。

その結果、営業成績は上がらないのに、営業レディの待遇改善

ばかりを要求され、ポケットマネーから、費用を出す羽目に

陥っていたのだった。

 

多くの営業レディ達は、割に合わないからと、次々に辞めていったが

本当は、一番辞めて欲しい大ボスが、登社拒否したまま、席だけは

残っているという状態になっていた。

私も、この大ボスのお陰で、随分苦汁を舐めさせられたが、

所長も変わるという事で、改めて、その大ボスが、退職届を

持ってくることになった。

 

しかし、彼女は、新しい所長であるSを見た途端、退職を

撤回するなどど、言い出したのである!

 

まさか・・・・保険の営業で所長まで上り詰めた職歴のある、鬼のような

還暦大ボスまで、「例のフェロモン攻撃」で、撃墜されてしまった

のだろうか・・・。

 

しかし、Sは、彼女が福岡営業所で犯した様々な事件を把握

しており、冷静に、退職願を出すように促した。

 

「お~~S グッジョブ!」

 

思わず、この時ばかりは、私は、心の中で、Sの事を

応援した。

 

実は、これには、本社の意向が、随分と働いて居たらしい。

不満ばかりで、売り上げ0であるにも関わらず、大ボスの

反旗に乗って、規定以上の待遇を求めた、おばさん達を

雇うぐらいなら、何の色にも、固定観念にも染まっていない

新卒の子を雇う方が、上司もやり易いし、結果として数字が

付いてくる・・・・という考え方に纏まったらしいのだ。

 

それで、まずは、戦犯の大ボスと、病気で2か月以上、会社を

休んだ営業レディが、首切りの対象となったのだった。

それを見ていた、最年長のおばさんは、「次は私かしら?」

なんて慌てていたが・・・。

 

「大丈夫、真面目で、仕事熱心だったのは、Yさんも、私も

他の社員さんも知ってるから、全力で守って見せるわ。」と

私たちは、力強く、励ました。

 

幸い、最年長のおばさんは、着付けの免許も持ち、元々

裕福なお家の奥さんなので、そういう貫禄のある人が

一人くらいは居た方が、会社にとっても好都合ということで

首は免れた。

 

結局、古株の中で、新体制発足時に残ったのは、SとY、男性営業マン

年長のおばさん、二十歳のM、そして事務の私。

という何とも、寂しい結果となった。

 

しかし、春には、14名もの新人が入社してくる。

新体制発足の為か、別の営業所からも、新しい営業マンが

赴任することに決まった。

 

事務所の移転先選びも、そろそろ大詰めを迎えようとしていた。

 

そんな中、事務所の場所やら、広さやら、納入する事務機器やら

どうしても、Sと相談して決めて行かなけらば成らない事が

増えて行った。

 

通常の事務処理は、事務処理としてあるので、時折、私は

仕事を片付ける為に、土・日のうち、一日出社することが、多くなった。

まあ、がやがやしているよりは、一人で、自分のペースで

電話にも出ることなく、事務処理ができるのだから、

そっちの方が、効率が良かったのだ。

 

しかし、単身赴任して暇なのか、行く場所が無いのか、

大して用事も無いくせに、Sは、土日出社してくるように

なった。

 

「所長、せっかくの土日なんですから、天ブラ(天神をブラブラ)

するとか、月曜の為に英気を養うとか、なさったらいかがですか?」

 

私は、遠回しに、「邪魔」ってことを言いたかったのだが・・・。

 

「いや~家に居てもさ、何もすることないし、落ち着かないんだよね~。」

などど言って、全く私の意を介そうとはしなかった。(鈍感な奴め)

 

まさか、無言で、何時間もオフィスで仕事する訳にもいかず、

時々、世間話をしつつ、事務処理をするという形に、どうしても

なっていった。

当時、私は、恥ずかしながら、文書を打つことは出来たものの、

ワープロを多用していたために、PCには不慣れで、記号文字を

出すのに、どこのキーを押していいのか、度々迷うことがあった。

 

あまり聞きたくはないけれど、教えて貰わねば先に進まないので、

私は、Sに「すみませ~ん、〇〇記号文字って、どのキーを

押せば出てくるんでしょうか?」と大声で叫んだ。

 

私は、事務所の端っこに置いてあるPCの前に座っていたので

Sが、座っている所長席から、「何何のキー」って叫んで

貰えばよかったのだが・・・。

 

まあ、ご丁寧に、わざわざ私のPCの所まで来て、

「コレコレ、このキーと一緒にシフトキーを押して・・・」

と教えてくれたのだった。

相変わらず、あの距離感で・・・。 (はぁ・・・・)

 

さすがに、この距離感にも、すっかり慣れていた筈だった。

 

しかし、次の瞬間、私に思いもよらない事が起こったのだ。