小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊴

この会社に、パートの事務として入り、初めての年度末を

来月に迎えることとなった。

 

以前の会社で、苦い思いをしていた私は、今の会社の

ちょっとばかり、他社とは違う、オリジナルな会計方法に

不安を感じていた。

その為に、予め、経理部に確認しておこうと考えていた。

 

総務経理部で、仲良くなった女の子に、年度末月末に〆た

事務書類を、いつまでに発送すればいいのか・・・とか、

いつもの月末とは、何か違う処理をする書類などは

無いのかとか・・・、一つ一つ確認をしていたのだ。

 

「そんなに神経質にならなくても、大丈夫ですよ。

ただ、年度が違うものの書類が、混在しないように気を

付けてくれれば、大丈夫です。」

「年度をまたぐってことが、できませんので、それだけは

注意してくださいね!」

 

特に、気を付けるというほどでもない、ごく当たり前の事を

言われた私は、ほっとしていた。

これなら、2班分締めたとしても、普段より、少し多めの

残業で済みそうだった。

 

私は、仕事の段取りをつけておきたくて、Sに尋ねた。

 

「もし、決定しているようでしたら、来月の、それぞれのチームの、

催事の日程を教えて頂きたいんですが・・・。」

 

「ん・・・来月の催事の日程?」

「はい、日程です。」

「まだ、最終決定じゃないんだけどさ~、なかなかいい会場が

取れなくてさ・・・。」

「え~っと、Bチームが、3月19・20・21日で●●ホールだろ・・・

そして、僕のAチームが、3月30・31・4月1日で、▲▲ホールって

とこかな~。」

 

「え・・・Aチームは、4月1日を、日程に入れるってことですか?」

「ああ、そうだよ、AとBの催事に、10日ぐらい空きがないと

厳しいだろ?」

 

「確かに、普段は、そうなのですが、来月ばかりは、年度末で

年度末をまたぐ催事の日程は、組むことができません。」

 

「はぁ~何でだよ~。別に関係ないじゃん!」

「いえ、そういう訳には、行かないんです。」

「一催事一会計で、〆る訳ですが、3月31日を持って、年度末が

来るわけですから、4月1日は、もう、来年度という括りになります。

一会計の中に、別年度のものが、混在するわけには、行かないんです。

 

「いや、そんなに堅い事言わなくてもさ~。」

「堅いとか、柔らかいとかの、問題じゃありません!」

 

「一部上場会社である、親会社も、そのように処理する訳です。

連結決算をする、子会社のうちの会社だけ、例外に対応するなんて

許されませんよ!!」

 

「そっか・・・じゃ、一応、一日前倒しの日程にするか、

最悪2日の開催にするか、調整をしてみるわ。」

 

「はい、ぐれぐれも、よろしくお願い致します。」

 

しかし、正式に発表されたAチームの日程は、最初のままだった。

それどころか、年度末に掛かっていなかったBチームまで

良いホールが、見つかったからと言って、年度末を越える

日にち設定にされてしまっていた。

 

「所長、何考えているんですか!? あれほど、お願いした

じゃありませんか。年度末を越えての、催事日程は、組めない

って!」

「いや、そうは言うけどさ、どこのホールも開いてないし、

2日間の日程じゃ、売り上げが、目標に届かないんだよ!」

「やるしかないんだ・・・何とかなるさ・・・。」

 

「何とか成るですって!何ともなりません。」

「年度末の会計ルールっていうのは、株主総会をつつがなく

乗り切る為にも、絶対に動かせない、厳正なものなんです。」

 

「ごねれば何とななるって、ものじゃないんです。

甘く見ないで下さいよ!

毎月の会計のように、融通が利くものじゃないんですから!」 

 

日ごろ、大人しい私の、あまりの熱弁に、ちょっと驚いた

様子のSだったが・・・。

 

「会計も何も、売り上げが上がらなければ、会社として

成り立たないんだよ!日程は、動かせないから・・・。」

と、さっさと席を立ってしまったのだった。

 

オイオイ、Sよ!

お釈迦さまは許しても、経理閻魔大王さまは、見逃しては

くれないんだぞ~~~~。  (。-`ω-)

ゴリ押しも、いい加減にしないと、バチ当たるぞ~~~。

 

私は、仕方なく、総務経理部に電話し、詳細を説明した。

 

「え~~あれほど、いったじゃないですか!

年度末違うのは、ダメって!」

 

「ええ、私も、さっき、S所長の前で、啖呵切りましたけど、

馬の耳に念仏です!」

「私の言うことなんて、鼻にもかけないんで、ここは一発

経理部長なり、統括のK部長なりから、ガツンと、言ってやって

下さい。」

 

「もう、全く、ただでさえ忙しいのに、S所長なんてこと

してくれるんですか!」

「分かりました。とりあえず、経理部長から、電話を入れて

頂くよう、お願いしてみます。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

しかし、経理部長からの電話も、統括のK部長の電話も、功を

奏さなかった。

 

いや、何なん!?

 

サラリーマン社会で、上司の言うこと聞かないとか!

会計ルールっていう、公のルールも無視するとか!

 

Sよ!お前、何様じゃ~~~~~。

 

っていうか、なんで、一地方の所長如きを、説得できんのだ、

本社よ!

 

「じゃ、おまえは、首だ!」ってなぜ、言えない!

さすがに、そう言われれば、Sだって従わざるを得ないだろうに。

 

Sの不気味な特別扱いの所為で、本社の経理チームは、上を下への

大騒ぎとなっていた。

 

「何で、こんなことになっちゃったんです?

どうして止められなかったの!?」

 

そんなお門違いな、苦情が、私に寄せられた。

 

「いや、パートのおばちゃんに、何かできることあります?」

経理部長の言うことも、統括部長の言うことも利かない奴

なんですよ?」

「まあ、私が、社長だったら、即刻、首切ってますけどね・・・。

残念ながら、社長じゃないもんで・・・。」

 

もう、こうなったら、グタグタ言ってても時間の無駄なのだ。

腹をくくってやるしかないのだが、いくら具体的な

事務処理内容を聞いても、何せ前例がないのだから、

彼らも、的確な答えが出せないのだ。

 

「私、二班分締めないと行けないんです。」

「今から、準備しておかないと、年度末の締め切りに間に合い

ませんから! とにかく、具体策を考えてください。」

 

すったもんだの挙句、「一催事一会計」のルールの方を

反故にして、一催事の中の、年度末をはみ出す部分のみ

翌年度の計上をすることに、落ち着いた。

しかし、付随する問題が、多すぎて、毎回、経理部と

打ち合わせをすることになってしまった。

 

催事に来られる、お客様からの、預かり金を計上するのに

年度内にお預かりしていても、清算が年度末を越えた日に

する場合は、どちらに入れるのかとか・・・。

 

しかし、売り上げは、それで良くても、微妙な問題は

後から、後から湧いてくるのだった。

 

そもそも、開催日程が、被り、しかも年度末を越え、

2班の会計をそれぞれ二つに分け、4会計で〆ることに

なるのだ。

一体、私ひとりの体で、どうやってこなせと言うのだろう?

 

夫は単身赴任な為、子どもを一人待たせて、延々残業をする

訳にはいかないのだ。

この時ほど、私は、この会社へ入ってしまったことを

後悔したことはなかった。

 

Sよ!

来世は、知らんぞ!

傍若無人に振舞うのは、せめて女性関係だけにしておいてくれ。

神聖な、会計ルールまで、犯すなら、きっと来世は、一円に泣く

人生が待っておるぞ~~~~。(by 算盤の神)