そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その⑪
やっぱり出遭ってた・・・。
古い記憶を辿った時に、ぼんやりと思い出したことが
一つだけあった。
しかし、その思い出の輪郭は、掴みどころが無いほど、
儚い記憶のような気がしていた。
毎晩、お風呂に入りながら、記憶のテープを巻き戻す私。
そう、そう、確か、27・・・8の頃。
3つ年下の友人から誘われて出かけた、吉野ケ里。
当時、私は、全く古代の遺跡とかに興味が無くて、
「どうしよう・・・」と思ったのだが・・・。
久しぶりに、彼女が誘ってくれたのだから・・・と
思い直して、出かけたのだった。
吉野ケ里自体は、田舎の、のんびりした場所にあったのだが、
そんな場所にも関わらず、門の前には、既に行列が出来ていた。
「並んでまで見る程のものかしら・・・。」そんなネガティブな
気持ちを、抱いて行列に並ぶ私。
ただ、並んでいる間も、久々に会った彼女との会話は、思いのほか
弾んだ。
いつの間にか、私たちの後ろにも、行列が出来ていた。
「いつ頃、入れるのかしらね・・・。」
かなり長い時間を待たされて、私たちは、流石に退屈し始めた。
すると、私たちの、真後ろに並んでいた、若いカップルと
目が合った。
「こんにちは」
「こんにちは~」
「どこから来たの?」
気軽に話しかける私達。
彼女は北海道、彼は、埼玉から、はるばる来たのだという。
「へ~遠距離恋愛なんだね・・・大変そう・・・。」
そう突っ込む私たちに、彼は、言い辛そうに答えた。
「いえ、まだ僕たち、そんな関係じゃなくて・・・。」
「え~てっきり恋人同士かと思ったのに~。」
「知り合ったばかりなの?そんなに遠くて、一体どこで
知り合ったの? あ、大学が一緒とか?」
「いや、そういう訳でも無いんですけど・・・。」
そう答える彼女は、透明感のある、まるで妖精みたいな
ピュアな雰囲気を醸し出していた。
「女の子は、可愛いけど、男の子は、パッとしないな~。」
と、心の中で、思わず採点してしまう私。
そんな他愛のない会話をしているうちに、いつの間にか
列は進み、会場の中へ入ることが出来た。
案内の人の説明を聞き、公園内を廻る私達。
高床式の住居の中にも入れるようだ。
しかし、困ったことに、当日、私は、ロングのプリーツスカートを
履いていた。
まさか・・・こんな梯子を上って上がるって知ってたなら
こんな格好してこなかったのに~。
後悔しても、あとの祭りである。
スカートを抑えつつ、梯子を上る私。
スカートに気を取られていた私は、上り切った所で
低い天井の鴨居に、頭をぶつけてしまった。
「あ~痛い!」
「大丈夫?」
思わず、心配そうに顔を覗き込む友人。
「あ、大丈夫よ・・・油断しちゃったわ。」
「気を付けてね、まだ、あと2つ櫓もあるわよ~。」
「うん、ありがと~。」
今度は、用心して登る私。
なのに、また鴨居に頭をぶつけてしまった。
「ちょっと、本当に大丈夫?」
「あ~私、なんてどんくさいのかしら・・・。」
情けなくなる私。
「今度こそ、気を付けてよ」
「大丈夫よ、流石に、三度ぶつけたら、バカでしょ~。」
自分で、そう言ったにも関わらず、私は、またもや、ぶつけてしまった。
友人は、呆れるのを通り越して、笑いを我慢していた。
後ろから来ていたカップルも、もはや笑いをこらえるのは
難しかったらしい・・・。
「なんで、三度もぶつけるかな~」
「私だって、気をつけてたのよ~、でもね大丈夫って思った
瞬間、何かに、頭を持って行かれたのよ。
まるで、誰かに、手で、鴨居へと引っ張られたみたいだったんだから~。
笑いを堪えきれず、クスクスと笑っていたカップルだったが、
私の、そんな意味不明な説明に、何故か、男の子だけは
急に、真顔になったのだった。
笑いが起こったことで、私たちと、そのカップルは、急に
仲良くなった。
もうそろそろ、公園巡りも終わろうかという頃に、急に
男の子が「一緒に、写真を撮りましょう!」と
提案してきた。
「あら、二人で撮ったらいいじゃない。撮ってあげるわよ。」
そう言って、二人を並ばせ、写真を写す私。
「じゃね~」
そう言って、帰ろうとすると、「やっぱり記念に写真撮って
下さいよ~お姉さんがた~。」と男の子が追いかけてきた。
写真嫌いの私は、断ったのだが、なかなか、男の子は
納得してくれない。
仕方なく、一枚だけ写真を撮った。
「写真、送りますよ~住所教えてください。」
そう言う男の子に、
「いいわ、要らない、捨てて頂戴。」と言って
手を振る私達。
しかし、尚も追いかけて、住所を、しつこく聞こうとする男の子。
とうとう、友人が折れて、自分の住所を教えていた。
ぽつ~んと残された彼女の表情を見ていた私は、
男の子に、説教を始めた。
「あのね、デートで来ててさ、他の女の写真撮ったり、
住所聞いたり、どういうつもり?」
「もっと彼女大切にしなさいよ! あんなにかわいい子なのに!」
そう息巻く私に、彼女の方は、諦めたみたいに、
「いつだって、こうなんですよ・・・。」と寂しそうに答えた。
「何ですって!いつも、こうなの?」
呆れる私達。
「いや~綺麗な女性を見ると、放っておけないんですよ~」
「どの口が言うか・・・どの口が!」
呆れかえった私たちは、可愛い女の子に、同情しつつ、公園を後にした。
後日談として、写真は、友人の元に送られて来なかったとの
ことである。
だったら、撮りなさんな・・・・である。
もう、既に、二十歳の頃から、女性に対する尽きせぬ興味
って奴が、芽生えていたんでしょうかね~。
お前は、イタリア人か!
やれやれ・・・・。
思い出した私だったが、全く笑えないエピソード。
どんな出会いだよ・・・・全く!
この思い出は、私の心の中に、ひっそりと仕舞っておくこと
にして、S本人にも、他の誰にも話さないと、私は決めた。