小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉘

結局、Mは、Sの家族が来福中、ぬけぬけと家にまで

押しかけ、逢いに行っていた事が、解った。

しかも、黙っていればいいものを、Mは、その事実を会社で

しかも、新人達が居る前で、喋ってしまった。

 

若い新入生に、Sを取られまいと、釘を刺したかった

のかも知れないが、それは、あまりに愚かな行動だった。

 

会社の大人チームは、Mの大胆不敵な行動に、呆れ、もう

付ける薬は無いな・・・と諦めていた。

 

「子どもたち、二人とも可愛くて、思わず、だっこ

しちゃいました~。

私、あの子たちなら、お母さんになれるかな~って。」

 

(おいおい、あんた、絶対、奥さんにばれてるって・・・。)

 

そんな痛い言動をする先輩なのに、新人後輩達は、あまりに

大人で、切なくなってしまう。

 

「うわ~会いに行ったんですか~、いいな~、私たちも

逢いたかったな~。所長、今度来られたら、絶対、私たち

にも、逢わせてくださいね~。」

 

「う・・うん、解ったよ。」

 

Mにとっては、前門の虎(新人美女軍団)、校門の狼(信販の美人派遣)

って状態で、油断できないから、必死なんだろうけど・・・。

 

いつもは見えてないけど、頭の上に、奥様という、巨象が居るのよ。

大人しく見えても、一旦、暴れると、虎も、狼も、蹴散らされるのよ。

ましてや、白〇〇なんて、一気に踏みつぶされるわよ。

だてに、ドンファンの奥様業を、何年もやってる訳じゃないんだから。

 

何だか、Sの奥さんの事が、他人事とは思えなくて、私も、

一度お会いして、本当の気持ちは、どうなのか、

聞いてみたい衝動に駆られていた。

 

夫の不倫に悩む、人妻同士、案外気があったりしてね!

 

Sが、赴任してすぐ、私に、奥様が住んでいる家の住所と

連絡先を、渡そうとしたことが、あったのだが・・・。

 

「え、渡して大丈夫ですか? 何かあったら、すぐ連絡

入れちゃいますよ~。」と、冗談を言ったら、

「あ、それもそうだな・・・。」って

すぐに、引っ込めた事が、あったっけ・・・。

余計な事言わないで、貰っておけば良かったよ。

 

そうすれば、もうちょっと、堅牢な防波堤になれた

かも知れないのに・・・。

 

奥さんに会ったことで、自信がついたのか、Mの行動は

もはや、誰にも止められないほどの、暴走列車と

化していた。

 

お酒の席で、Sの横にべったりと寄り添い、

「私、肉付きがいいんで、抱き心地がいいんですよ~。」

って、体をくねらしてみたり・・・。

 

(何のアピールやねん・・・)

 

これには、さすがのSも、

「よくそんな事、ここで言うな~・・・引くわ・・・。」

と、驚いていたのだが・・・。

 

もう何でもアリなんやな・・・。

何で、そんなに必死なのか・・・。

 

私たち大人チームの前だけなら、私たちが、胸やけすればいいだけ

の話だったのだが・・・。

 

Mの顕示欲は、もはや、真夏の積乱雲の如く、ムクムクと膨れあがり

新人達はおろか、取引先のベンダーさん達にすら、遠慮しない

状態へと陥っていた。

 

ある展示会でのこと。

 

着物をまだ、着つけていなかったMは、

「所長~、着物着させてくださぁ~~~い。」と大声で

叫びながら、Sを探していた。

それを聞いていた、着つけのプロの女性が、

「何いってるの、はしたない!男の人に着つけてもらう

だなんて。」

「こっちいらっしゃい。着せてあげるわ。」

と、Mの手を引いて、お帳場へと連れて行こうとしたのだが

「私、所長がいいんですぅ~、所長に着せて貰いたいんですぅ。」

と言いながら、着物一式を持って、会場の真ん中辺りで、準備

していたSの元へ、走り寄って行った。

 

Sは、少々呆れながらも、「仕方ないな~、着せてあげるよ」

と言ったのだが、まだ、洋服のままで、襦袢すら着てないM

を見て、「おいおい、ここでストリップでもやる気か!?」

と、さすがにあきれ顔。

 

額に血管が浮かび上がって、怒り心頭な様子の、着付けの先生が

「こっち、いらっしゃい!」と

半ば、強引に、Mの手を引いて、お帳場へと連れ去っていった。

中で、着つけて行きなさい!と、着つけの先生に、再度説得

されていたようだったが、襦袢を着せて貰うやいなや、Mは

着物を、襦袢の上から引っかけて、すぐに、Sの元へと

走り寄ってきた。

 

「所長~、着させてくださ~~~い。」

「全く、しょうがねえなぁ~。」

そう言いながらも、まんざらでもない表情で、着付けを

請け負うS。

 

しかし、そこは会場のど真ん中。

 

SとMを真ん中にして、新人達も、取引先ベンダーさんも、

着つけの先生も、信販会社の女性たちも、取り巻くようにして

二人の、エロス漂う、安っぽいお不倫劇場を見せられているのだ。

 

明らかに軽蔑して睨む顔。

ニヤニヤ笑っている顔。

嫉妬で目の奥の炎が燃えている顔。

見てはいけないものを見せられて、目のやり場に困っている顔。

 

そんな十人十色の顔が、二人を遠巻きに見つめていた。

 

一体、何なんだ! コレは!

 

これから、お客様を迎えるにあたって、皆、緊張し、頑張ろうと

準備をしている最中だというのに・・・・。

 

何のために、私たちは、こんなものを見せられている訳????

 

(せめて、お不倫のイチャイチャタイムは、場外でやってくれ!)

 

当の二人は、そんな大勢の、声なき雑音など、気にする素振りは

全く無かったのだが・・・。

 

(このシチュエーション、痛快TVスカッとジャパンで、再現して

貰って、誰かに、神対応大岡裁きしてもらいたいわ~~~。)

 

残念ながら、その時には、誰も神対応できる人は、出現

しませんでした。

 

さすがの、冷徹おばはんの私も、呆れかえって、

嫌味の一つも言えませんでしたわ。

 

厚顔無恥に付ける薬など、どこにも売ってない!

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉗

奥さんと子どもさんが、来福する少し前、Sは、

久しぶりに会う家族の為、家族孝行よろしく

色々、プランを練っていたようだった。

 

「ねえ、瑠璃さん、子どもが、楽しく遊べる場所とか

ないかな~。」

「そうですね、お子さんが、思いっきり公園とかで、

体を動かして、遊具で遊びたいなら、博多の森東平尾公園)とか

いいかもですね~。長い滑り台とか、遊具もありますし。」

「そこって遠いの?」

「そうですね、ちょっと車ないと不便ですね・・・。」

 

「じゃ、もっと近場で・・・。」

「だったら、観覧車とかどうですか?」

「アジア一大きい観覧車と、小ぶりな観覧車二つあって、

眺めもいいですし、海沿いで、風が気持ちいいんですよ。

それにレストランとか、ちょっとした商業施設もありますよ。」

 

「いいね~。」

「そこどこ? 近い?」

「マリノアシティって言うんですけど、地下鉄の最寄り駅から

確か、バスが出てたと思いますよ。」

「あ、良かったら、観覧車の無料チケット頂いたんで、

使いますか?」

「え、本当? いいの?」

「はい、もう一回乗っちゃったんで、高所恐怖症の私としては

もう、お腹いっぱいですから、ご遠慮なくどうぞ!」

私は、財布に、入れっぱなしにしていたチケットを、手渡した。

 

「サンキュ~助かるわ。」

「よく、そこ行くの?」

「まあ、家から近いので、時々、買い物とか行きますね。」

 

「家、近いんだ・・・。」

「まあ、ギリギリ歩けなくはないかな・・・って感じですが。」

「戸建て?それともマンション?」

「マンションですよ。」

「海近物件で、すごく気に入ってます。」

「建物何色?」

「茶色ですけど・・・何か・・・。」

「いや、別に・・・。」

 

Sの知らないところで、色々な思惑が揺れているのも知らず

「以外に子煩悩」という、一面を覗かせつつ、能天気な

までに、浮かれた調子を見せるSに、私は、複雑な思いが

湧いた。

 

なんで、家族別々に住むことになったんだろう・・・。

まだ、お子さんは、小学校就学前だし、一緒に家族揃って

福岡に来ていれば、波風立つことも、なかったかも

知れないのに・・・・。

 

つかの間の家族ランデブーが終わり、何事も無かったかのように

また、いつもの日常が戻ってきた。

 

「瑠璃さん、この間はありがとう。坊主達、物凄く喜んだよ。」

「そうですか、それは良かったです。お役に立てて・・・。」

「ゆっくり出来ましたか?」

「うん、あそこ気持ちいいよね~、海も綺麗だし、風も気持ち

良いし、あんなとこ住めたらいいよね。」

 

「マリノアシティから、ちょっと歩けば、住宅街ありますよ。」

「お子さんも、小さいから、ご一緒に引っ越して、住んだら

楽しいと思いますよ。」

 

「うん・・・でも、奥さんが転勤、嫌がっててね・・・。」

「そうですか・・・、お子さんが小さいうちは、できれば

一緒に暮らした方が、いいと思いますけどね・・・。」

 

「それにしても、良い景色だったな・・・観覧車からの眺め。」

 

 

「思わず・・・・探しちゃったよ。」

 

「・・・・何を?」

 

「近くに住んでる・・・・って言ってたからさ・・・。」

 

「え・・・ああ・・・そうですか・・・。」

 

「まあ、解んなかったけどね・・・。」

 

そりゃそうだ。

あの辺り、360度 マンションは一杯あるし、

茶色のマンションだって、珍しくない。

 

しかし、その科白、もしかして、

私への、お礼の積りなのかしら?

 

ゴメンね、ときめかなくて。(爆)

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉖

取引先との間に、暗雲が垂れ込めそうな事態になった

その折も折、なんと、今まで、放置プレイを決めこんで

いたSの奥様と、お子さんが、来福する事になった。

 

アレ・・・以外に、奥さん、いい感してるかも!?

 

「ねえねえ、ちょっと知ってる?」

訳知り顔で、年長のおばさんが、小声で私に話しかけてきた。

「何?」

「Mちゃんだけどさ、来週、Sの奥さんが来るじゃない。

奥さんが来てるときは、電話掛けないように、Sに念押し

されたらしいわよ!」

 

「え~念押し! 念押しされないと、掛けちゃうわけ?」

「電話できないと、寂しい」とか言ってたわよ~。

「呆れた・・・。」

「お子さんも来るんだもの、せめて親子のデートぐらい

静かに待ってあげるのが、現地妻のルールよね~。」

 

 現地妻のルールって!(爆)

 

もう、自分の言っていることに、何の意味も正当性も

ないことは解っていたが、せめて、子どもたちには、

嫌な思いは、させたくなかった。

同じ、子どもを持つ母として。

 

Sの子どもたちが来ることを知り、会社の新人さんたちも、

ちょっと浮足だっていた。

「え~お子さんって、デスクに飾ってある、あのお子さん

ですよね~。」

「すごっく可愛い~。」

「会いたいな~。」

「会社に連れてきて下さいよ~。」

特に、女の子達は、Sジュニアと、遊びたがっていた。

 

Sは、自分のドンファンっぷりを、カモフラージュにする為か、

はたまた、家族(。・ω・。)ノ♡のアピールの為か、

デスクに、二人の子どもの写真を飾っていたのだった。

いかにも、SのDNAを、受け継いでいると言わんばかりに

そっくりな、その男の子達は、写真縦立ての中で、無邪気に

笑っていた。

 

Sだけでなく、Sジュニアも人気になりそうな気配に、

Mは、慌てたのだろうか・・・。

「私も、会いたいです。」

「会いにいっていいですか?」

と、とんでもないことを言い出した。

 

「いや、ちょっとMちゃん、せっかくの家族水入らず

なんだから、そこは遠慮しといたら・・・。」

 

そんなことを言う、おばちゃんずの忠告など、彼女は

どこ吹く風である。

 

「不味いわね・・・奥様VS愛人対決じゃないの!」

 

女の感は鋭いのだ。

 

どんなにMが、演技派女優だったとしても、ドンファン

妻として、こと女性の匂いには、敏感な筈の奥様が、

見抜けない訳がない。

狐と狸の化かしあいの冷戦か、はたまた、仁義なき

血みどろの闘争となるのか・・・・。

 

まあ、子どもさんも一緒だから、お互い、顔に出す訳

にはいかないだろうけれど・・・・。

 

展示会も、同時進行だったため、信販のTさんにも、この

事情は漏れてしまっていた。

 

「来てるんですってね・・・。」

「そうなのよ。」

「私さ、Mちゃんが、S所長に電話しないかどうか

見張っているのよ。」

「えっ・・・どうやって?」

「Mちゃんと、S所長に交互に電話してるの。」

「仮に、Mちゃんの電話が話し中で、すぐにS所長に

掛けて、電話中なら、二人は、電話しているってことでしょ?」

 

「え~~~~~っ、そんな事してるの!?」

 

Tさんの、何かに憑かれたような情熱に、私は、思わず、背筋が

凍った。

 

「でもさ、奥様も来ている訳じゃない?もしも電話が繋がったら

どうするの? 奥さん、変に思わないかしら?」

「そんな事ないでしょ、だって私、Mちゃんを見張ってあげて

いるんだもの。感謝してもらいたいくらいよ。」

 

あの快活で、豪快なTさんは、どこへ行ったのだろう・・・・。

私の目の前にいるTさんは、もう、全く別人のように

しか見えない。

 

その後も、Tさんの「正義感溢れるストーカー」ぶりは、

次第にエスカレートし、Sの立場を追い込み、尚且つ

取引先とのゴタゴタの末、本社に知られることと

なってしまう。

私が、退職した後も、彼女は、頼まれてもいないSの

行動報告書を、いちいち、私に、送信してきた。

 

いや・・・もう、Sのゴタゴタに巻き込まんでくれ!

 

何度、心から、お願いしたことだろう・・・。

しかし、Sへの執着を、復讐心へと醸成させたTさんには

私の、本心は、届かなかったようだった。

 

 

 

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉕

新人が入り、フレッシュな接客に惹かれたのか、展示会を重ねる度に、

新しいお客様が、増えて行った。

勿論、それに伴って、お客様が組むローンの手続きも増えてくる。

Tさん一人体制では、難しくなり、新たに信販会社から、もう一人

派遣されるようになった。

今回派遣されたのは、Tさんよりも、一回り若い女性。

勿論、美人の産地「博多」の名を汚さない、超美人さんである。

フジテレビの「めざましテレビ」に出てる久慈 暁子

さんみたいなタイプだ。

 

ただ、このあたりから、Tさんの明るさに、若干翳りが

生じてきたように思う。

 

「あ~あ、私達ぐらいの年齢になるとさ、ガードル履いても

もう、おなかのぽっこり、誤魔化しようがないわね~。」

「何いってるの~Tさん、スレンダーじゃないのよ~。

そんな事言われたら、私は、どうしたらいいのよ~。」

私なんか、ガードル履いても、履かなくても、タヌキ腹

に変わりないんだから~~~~。」

 

そう、笑いながら励ましても、彼女の顔は、何故か、

浮かないままだった。

 

「結婚して、子どもとかできて、しばらく経つと、どうして

なくなっちゃうんだろうね・・・。」

 

「あ・・・」

 

Tさんが、ご主人に対して、不満を持っているということは

薄々感じてはいたのだが、その一因が、セックスレスだった

事に気付き、私は、何故か、ちょっと、ほっとしていた。

 

「みんな、そんなもんだと思うわよ~。」

「一緒に暮らしていると、もう男女って感じじゃなくなるもんね。」

 

こんな科白が、決してTさんの慰めにはならないことは、解って

いたのだが、これは、日本人夫婦には、結構ありがちな悩みだと

思う。

 

「最近さ、S所長冷たいよね~。」

「え何で? 何か嫌な事言われたの?」

 

「そうじゃないけどさ・・・・、ちょっと前まで、私のこと

綺麗だとか、若く見えるとか、誉めてくれたのにさ、今は

全く、目線すら合わないわ。」

「若い子が来たら、もう、そっちしか、目に入らないって

感じよ。」

「ああ、新人さんね! 確かに美人さんだものね。」

「彼女、若いけど、既婚者だし、しつこく食事に誘われて

困るって、言ってたわ。」

 

「え~~~、もう、そんなにアタック掛けてるんだ!」

「迂闊だったわ~。」

「まさか、取引先さんへ、魔の手を伸ばしていたとは!」

「内内で、不倫されるのも困るけど、変に取引先と

ゴタゴタするのは、尚更困るわ・・・。」

 

「そうでしょ! あまりしつこいようだったら、会社に

言って、ベテランさんに変えて貰うわ。」

 

果たして、Tさんに、そんな権限があるのかどうか、私には

計りかねたが、取引先に信頼が厚く、ベテランのTさんが、

会社に、ご注進申し上げたとしたら、全く、放置されると

いうことには、ならないだろう。

 

私は、何だか、嫌な予感がした。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉔

まだ、Sが赴任する前、少人数で、展示会を切り盛りせざるを

得ない状態だった頃。

 

会社の一員では無いのに、社員さん以上に、気を配ってくれて

気働きのできる、素晴らしい女性が、居た。

 

彼女は、所謂、信販会社からの、派遣さんだった。

通常、高額商品を取り扱う展示会などでは、概ね、彼女たちの

仕事は、信販受付に座ったまま待機し、お客さまが、手続きに

来られない限りは、ただ、ぼんやりと時を過ごすか、もしくは

本を読んだり、同僚と喋ったりして、時間を過ごすのが、

一般的な仕事のやり方だった。

 

しかし、彼女は、全く、違っていた。

 

頼まれなくても、お客様を誘導し、お茶を出し、お客様担当に

繋いでくれるし、何か人手が足りないと見るや、すぐに、その場に

駆けつけて、対応してくれる、ホントに、頼もしい人材だったのだ。

 

「Tさん、いつもありがとうね! Tさんのお陰で、毎回、何とか

展示会が回るわ~。」

「何言ってるのよ~、これぐらい何でも無いわよ~。

ただ、座って待ってるのって、私の性分に合わないのよ~。

動いてないと死ぬわ~~~だって、回遊魚だも~~~ん。」

 

私に気を使わせないように、ユーモアで返してくれる彼女は、

大らかで、開けっぴろげで、溌剌とした、博多っ子。

芸能人で言うと、田中律子さんみたいなタイプだった。

 

何度、このTさんが、「自分の会社の同僚だったら、良かったのに。」

と、思ったことだろうか・・・。

同年代だったこともあり、彼女には、特別親しみを感じるように

なった。

高校生になる、彼女の息子様さんとの、やりとりには、毎回

笑わせてもらったっけ・・・。

思春期の男の子って、特別大変だと思うけど、彼女は、あっけらかんと

明るいエロ話も、躊躇しないほど、お互い、信頼関係が築けていた

ようだった。

 

そんな明るく、屈託のない女性が、よもや、Sの出現で、あんなにも

豹変してしまうとは・・・・。

 

彼女の、変わりゆく姿、言動を見るたび、Sの罪深さを、改めて

思い知らされるのだ。

 

「今度来た、所長さん、面白いわね! 話してると、すごく話題が

豊富で、飽きないわ。」

「そ・・・そうね、確かに、話は、面白いと思うわ。

仕事もできるしね・・・。唯一、悪い癖が発揮されなければ

本当に、ありがたい人なんだけどね・・・・。」

 

「え~~~ナニナニ? どんな悪い癖よ? 教えて~~~。」

「うん・・・そうね・・・また、今度・・・。」

「やだ、気になるじゃないの~~~。」

 

「当ててみようか!?  女性関係でしょ?」

「まあ・・・そんなような・・・。」

「やっぱりね~~~、モテル感じはするな~って

思ったのよ。」

 

「私みたいな、おばちゃんにまで、綺麗だね~とか、おべっか

使っちゃってさ~。 普通、若い子とか、独身の子とかになら

そういうリップサービスも、珍しくないけど、アラフォーの

私にも、気を使ってくれるあたり、かなり女性の扱いに

慣れてるな~~~って思ってさ。」

 

「Tさん、実年齢より、若く見えるし、実際綺麗だもの。

それは、おべっかじゃなくて、単なる感想だと思うよ。」

「やだもう~~~瑠璃さんたら、乗せるの上手いわね~。」

「また、仕事、ガンガン張り切っちゃうわよ~。」

 

そう、こんな軽口を叩ける間は、まだ良かったのだ。

私は、賢明なTさんのことだから、Sのドンファンぶりも

笑いのネタとして、受け流してくれると、信じて疑わなかった。

しかし、彼女の言動は、日を追う度、危なっかしいものと

なっていくのだった。

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉓

宴会の翌日。

二次会まで、付き合ったおばちゃまは、もの言いたげに

出社直後の、私に近づいてきた。

 

「いや~楽しかったわよ~。」

「あなたも来れば良かったのに~。」

カラオケ、めっちゃ盛り上がっちゃったわ~。

 

「ふ~ん、何歌ったの?」

 

「Sはね、さざんオールスターズ歌ったわよ。」

「もうね、めっちゃ上手かったわ。」

「あれは、歌で、女落とすタイプだわね!」

 

「あ~、予想通りな感じね! サザン、ありがちね!」

 

元々渋い声の持ち主であるSだが、Sのお母さんが

カラオケ(歌謡教室)の先生であるらしく、やはり

歌の能力は、遺伝的要素が強いのかもしれない。

 

私と言えば、言わずと知れた、代々の音痴。(知らんがな~)

音を外さずに歌うのが、ギリな、残念な歌唱力。

フルコーラス、音程を保つのは、しんどいのだが・・・。

以外に、物真似は、上手なのである。

 

中森明菜の歌を歌った時には、途中まで、あれ?

もしかして本人?と勘違いしてくれる人も居たぐらいだ。

 

最近は、カラオケはおろか、鼻歌すら歌わないから、

全く持って、声も出ないけれど・・・。

 

まあ、プロの歌手だって、年齢を重ね、懐メロで、うん十年ぶりに

昔の自分の歌を、昔のキーで、歌うのは、なかなか困難

らしいしね・・・。

 

それを誤魔化すために、めちゃくちゃアレンジされた歌を

聴かせられるのは、ファンでなくても、とても偲びない。

 

歌で、またまた、お株を上げたSは、そろそろ爪の研ぎ頃だと

確信したのかも知れなかった。

新人の女性に限らない。

この後、彼が、仕事で携わる多くの女性達にも、

その触手を広げようと、画策していくのである。

 

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㉒

新人の歓迎会を兼ねた、その懇親会は、人数も多い事から、

しっかりと、予約を入れてお店を確保した。

前みたいに、さすらいの末、良いお店に入るなんて事は

到底無理だからだ。

 

総勢20名。

ちょっとした宴会ですな・・・。

 

若い子チームは、先に、宴会場へ出発し、大人チームは

少し時間を空けてから、出発した。

Mは、大人チームと一緒に行きたがったが、会場の場所を

知る人物が、あまりいないため、先に、若い子チームの

先導を務めるために、先乗りすることになったのだ。

 

大人チームが、仕事を終えて、やっと外に出た頃は、

トワイライトゾーンに入っており、茜とスカイブルーの

グラデーションに染まった空が、やけに美しく見えた。

 

そんな空を見上げながら、大人チームは、目的地まで

そぞろ歩いた。

 

「ああ、こんな夕暮れの美しい日に、いつか、私は、

Sとの不思議な出来事を、お互い、話すなんてことが

あるんだろうか・・・・。」

 

あれ、急に、乙女チックに陥ったぞ。

トワイライトタイムのマジックかしら!?

思わず、一人、首を横に振りながら、現実に戻る私。

 

「いや~いいね~。福岡ってさ、もっと田舎だと思ってたよ。」

「ここから見えるネオンが、良い感じだな~。」

 

そんな事を言いながら、ちょっとハイテンションになっていた

のは、千葉から来た、元店長だった。

彼は、ビジュアル系にありがちな、顔立ちが整ったタイプだったが

残念なことに、私よりも、身長が低いミニマム男子だったのだ。

 

彼が千葉の店長として働いていた時は、事務方との女性、つまり

私と同じ職種のおばちゃまとは、あまり仲が、芳しくなかったようだが

思ったほど、難しい性格でもなさそうなので、私は、内心ほっとした

のだった。

 

「そうでしょう? 福岡いいでしょう~。食べ物は美味しいし、

お姉さんたちは、綺麗だし、独身男性には、堪らん町ですよ~。」

 

「うん、何だか、凄く楽しくなってきた!」♪

 

(「以外に素直だよね・・・。」)

 

まあ、Sに比べれば、誰だって、そう思えたかもしれないが・・・。

 

 

お店につくと、待ちきれなかった若い子たちは、既に、良い感じに

出来上がっていた。

やっぱり、お酒が入ると、普段の彼らとは違う、別の顔がでてくる

らしく、意外な素顔を見ることができた。

普段大人しいけど、意外や意外、めっちゃお酒に強い子とかね!

よっぽど楽しかったのか、テンションが上がりすぎ、若い子たちは

お店の人に、何度も、「静かにお願いします」との注意を

受けてしまった。

 

大人チームは、お酒や、チューハイを、ちびちび

飲みながら、普段は見られない、若い子たちの、別の顔を

楽し気に見つめていた。

 

「いや、さすがに、あそこまでアゲアゲにはできんね~。」

 

まったりとお酒を楽しむ、大人チームだったが、Sだけは

若い子チームに交じり、楽し気に、爆笑していたのだった。

 

一次会は、お開きとなり、二次会は、どこへ行こうかと

みな、それぞれにアイディアを出し合ったが、場所が決まらず

一旦、外へ出て、歩きながら探すことになった。

 

すると意外なことに、Sが、「おれ、一旦ホテル戻るわ。」と

言い出した。

すると、Mは、びっくりし、「え~2次会行かないんですか~。」

所長が戻るんなら、私も、一緒に行きます~~~~。

 

(おいおい、ホテルに一緒に行くですと!?)(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

 

「あ・・・いや、ちょっと戻って、自宅に電話して、また

戻ってくるよ。」

二次会、どこでやるのか、教えてくれたら、あとで、そこに

合流するから・・・。

そう言うSに、まだ納得できないのか、ごねるM。

 

「僕ね、こうみえても、二児の父なんですよ。電話するって

約束しちゃったからね。約束守らないとね・・・。」

 

まだ、納得してなさそうなMだったが、おばちゃんと私で、

強引にMを引きずって、次の場所へと引っ張っていった。

次の場所は、カラオケのあるスナックということだったが

12時を回ったこともあり、シンデレラな私は、(爆)

「じゃ、ここで私は帰るね!」とお先に、失礼することに

したのだった。

 

「え~ちょっと、来ないの! 私ひとりじゃ、手に負えない

じゃないのよ~。」

とおばちゃまは、のたまったのだが、地下鉄電車の終電に

間に合わなくなる私は、手を振り、さっさと撤収したのだった。

 

終電乗るの、初めてだわ・・・。

ちょっとビビリ気味で乗車した私だったが、意外にも、酔っ払い

は、ほとんどおらず、静かな社内だった。

 

そりゃそうか・・・・。

博多じゃ、12時(0時)は、宵の口だもんね。