小さき森を愛する花  瑠璃唐草物語

瑠璃唐草の別名はネモフィラ。ギリシャ語のNemophila は、ギリシャ語の 「nemos(小さな森) + phileo(愛する)」が 語源とされています。そんな愛らしくも健気な花のように生きていきたいと思います。

そろそろ書くべき時なのでしょうかね・・・。 ツインソウル その㊻

確か、大阪万博の次の年のことだったと思う。

大阪に住んでいる親戚が、祖母と私と従妹を

招待してくれて、田舎から、初めて発展目覚ましい

「関西の都」である大阪へと足を踏み入れのだった。

小学生だった私には、見るもの、聞くものが全て、

物珍しかった。

そこで、初めて洋式トイレなるものに遭遇し、

使い方が解らず、悪戦苦闘した事が、今では、

遠い昔のエピソードとして、ひっそりと

私の記憶の片隅に仕舞われている。


そんな大阪の人生初の旅行の最中に、

他愛ない日常の一コマの出来事として忘れても、

全く不思議じゃない。

ほんの一瞬の出来事だったにも関わらず、

何故か、色褪せない「思いで」として残されている

出会いがあった。

出会いと言うには、あまりにも一瞬で、

そしてなんの変哲もない
短い会話に過ぎなかったのだが・・・・。


大阪の親戚が連れてきてくれた温泉。

温泉も初体験だった私。

建物に入ってすぐの場所に、土産物

コーナーがあった。

子どもの常として、やはり、そちらへ

興味がわいた。

従妹と一緒に、お土産物を物色。

そこで、私のハートを一瞬で射抜いたものが、

ショーケースに陳列してあった「パンダの貯金箱」

だった。

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「あ、これこれ、絶対これが欲しい・・・

お土産に買って帰りたい。」

そんなことを二人して話していたら・・・。

「ちょっと、お土産は、旅館の部屋に荷物を

置いてからにして頂戴!」と叔母に促され、

仕方なく、後ろ髪を引かれながらも

その場を後にしたのだった。


荷物を置くやいなや、従妹と私と祖母の三人で、

先ほどのお土産コーナーへと急いだ。

ワクワクしながら、ショーケースへと

近づいた私だったが・・・。


あろうことか、ほんの先ほどまであった

愛してやまないパンダの貯金箱が、

どこにも見当たらない。

「あれ、無いよ・・・どうして?」

困惑する私。

「何かお探しですか?」という店員さんの

問いかけに、

「ここに置いてあった、手を広げたパンダの貯金箱が、

無いんですけど・・・。」

「ああ、あれね、たった今売れてしまいました。」

「え~もう同じものはないんですか?」

「ごめんなさい、あのデザインは、あれが最後でした。」

ショックを隠し切れない私に、従妹が、

「ほら、こっちの方が可愛いよ。」

と手にお花を持ったパンダの貯金箱を勧めてきた。

「う~ん・・・でも、さっきの方が良かったなぁ~。」

仕方なく、花を持ったパンダの貯金箱を

買った私だったが、諦められす、あの時直ぐに

買えば良かったと後悔しきりだった。

あまりのガッカリぶりに、店員さんも気を使ったのか、

「ほら、あそこ、あそこにいる男の子が、あのパンダの

最後の貯金箱買ったのよ~、交換して貰えないか

聞いてみたらどうかしら?」

店員さんの指し示す方向を見ると、まだ2~3歳の

小さな男の子が大事そうに、パンダの貯金箱が

入っている包みを抱えていた。

ちょっと先を越されて、ムッとした表情をして

しまった私だが、さすがに、あんな小さな子に

交換してなんて、言えるわけがない。


諦めて、帰ることにした。


ところが、そんな一連の話の流れを

聞いていたのだろうか・・・。

その男の子が、私の方に近寄ってきた。

そして、その包みを私に向かって差出し、

「これ、おねえちゃんが、買うやつだったの?

ごめんね! あげるよ。」と言ったのだ。


私は、一瞬で、顔が真っ赤になった。

私より、はるかに小さい、この子の方が、

他の人の事を、きちんと思いやっていることに

気づいて、ムクれてしまった自分が、

恥ずかしくて、恥ずかしくて、仕方なかったのだ。


私は、「ごめんね。心配させちゃったね、

でも大丈夫だから。」

「パンダちゃん、大事にしてあげてね!」と

やっとのことで、その小さな男の子に、伝えた。

「ほんとにいいの?僕が持ってていいの?」

「いいんだよ、ありがとうね!」

小さな男の子は、うれしそうに、包みを

抱えながら、私に手を振り、

おばあちゃんと共に、旅館の中へと消えて行った。

何だか、周りの大人たちも、そんな二人の会話を

微笑ましく見守ってくれていたようだった。

しかし、当の私は、自分の我儘さに、早く

この場を立ち去りたくて仕方がなかったのだ。


部屋に戻り、包みをバックの中に

入れていたら、叔母が、

「何買ったの?」

「おばちゃんに見せてよ!」と言うので、

仕方なく、包みを渡した。

「あら、可愛いじゃない。良かったね買えて・・・。」

「ホントは、それが欲しかったわけじゃ

ないんだよね~、先に買われちゃったもんね~。」

と従妹が、さっきの出来事を話そうとしたので

「もう、いいの、それでいいから・・。」と遮って、

パンダの貯金箱を、叔母の手から取り戻し、

包んで、バックへとしまい込んだ。



「あら、何・・・なんかあったの?」

叔母の追及を逃れるように、私と従妹、そして

祖母は温泉に入るための準備をし始めた。


この温泉は、よそと違って土色をしたお湯だった。

「こんな泥みたいな温泉入れるの?」と

びっくりした私だったが、温泉に入り慣れている

祖母は、もう、気持ちよさそうにお湯に

浸かっていた。

従妹と私も、続いて入ろうとしたが、あまりに

お湯の温度が高くて、足を浸けるのが、

精一杯だった。


そんな時、広い温泉の湯船の向こうの方で

「熱いよ~熱いよ~。」と

泣き叫ぶ男の子の声がした。


「あれ、さっきの男の子じゃない?」

そう従妹が指さした。

湯煙の向こうで、おばあちゃんらしき人に、

無理やり湯船に入れられている2~3歳の

男の子のシルエットが見えた。


「多分、そうだね・・・。」

「熱いよね・・・私たちにだって熱いもん。

お子様には、きっと熱過ぎるよね・・・。

従妹も、私も、お子様には違いないのだが、

すっかり大人な気分で、女風呂に入れられている、

小さな男の子の事を、心配したのだった。


まあ、こんな、何てことない出来事だったのに、

あの買い損ねたパンダの貯金箱のデザインも、

男の子の言葉も、何十年も経った

今ですら、はっきりと覚えているのだ。


小さいのに、思いやりのある男の子として、

私の「記憶」に刻まれていたその男の子だったが、

何十年後かに、

「あ~三つ子の魂百まで・・。」

って、本当だな・・・と苦笑いするとは、まさか、

この時は予想だにしなかったのだ。

二度目に、彼に出会ったとき、私は、あの可愛い

2歳児が成長した彼と、同一人物とは

気づかなかった。  (そりゃそうだわ)

三度目に出会ったとき、あるキーワードで、

何十年も前の記憶がはらはらと紐解かれ、私に

大きな感動を齎すまでは、

半世紀近くかけて仕組まれた出会いだと

気づく理由もなかったのだった。
   

  (私の別ブログより引用)

 

ああ・・・そうだったんだ・・・。

 

有馬温泉のキーワードで、甦った記憶。

 

あの「パンダの貯金箱」を抱えた

無垢な幼子と、吉野ケ里遺跡で、写真を

撮りたいとごねていた青年、そして、今、ここに居る

女性の敵のようなSは、まさしく同一人物なのだ。

 

なんてこった!  ( ゚Д゚)!!

 

一体、何が、どうなったら、

こういう出会いが生まれるんだ!?

 

いや・・・ちょっと待て・・・。

 

何故に、Sと私しか知らないはずの「思い出」を

新人の女子達が知っている!?

 

まさか、お酒に酔った勢いで、その思い出話を

何の関係もない他人に、リリースしてしまったのか!

 

何で、人に話すかな・・・・。

 

Sとこの会社で出会ってすぐには、20歳と28歳で出会った

二度目の出会いしか思い出せてなかった私だが、

その思い出すら、お互い、暗黙の了解ってやつで、話さない

方が、良かれ・・・と思って黙っていたというのに・・・。

 

よりによって、第三者、しかも会社の人間に、

カミングアウトするなんて・・・。

 

(Sは、この三度の出会いに、いつから

気づいていたんだろうか・・・・。)

 

おそらく、この話を聞いた「新人女子たち」は、あらぬ

想像を巡らせ、あたかも、私とSとの間に、何か深い

関係があるのではないかと、勘ぐっていたに違いない!

 

「私、そうだったんだな~~って、思ちゃいますよ。」

 

「何を?」

 

意味ありげな視線と、質問を投げかけられたSは、

ぶっきらぼうに答えた。

 

「だって、そうなんでしょう?瑠璃さんの息子さんって

S所長との・・・・。」

 

あまりの飛躍しすぎた妄想に、私は思わず吹いた。

 

「無い無い、そんな事あるわけないじゃん!」(ヾノ・∀・`)ナイナイ

 

と、湧き上げる笑いを堪えるのに必死だった。

 

(だいたい、計算が合わんやないかい!

20歳と28歳で出会って、子どもが生まれていたなら、

息子は、もう、高校生になってなきゃいけない筈。

家の息子は、当時10歳だったのだ。

こんな簡単な計算ができないとは・・・・爆)

 

いくら、Sがドンファンだろうと、写真撮っただけでは、

妊娠したりしないぞ~~~~。(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

 

うけまくる私と裏腹に、Sは、苦虫を潰したような

表情を浮かべていた。

 

「俺の、何が、解るっていうんだ・・・。」

 

何故か、シリアスな表情で、そう呟くS。

 

ちょっと待て~~~~~!

そこは、まず否定やろ!

きっちり否定しないと、ますます勘ぐられるから!

 

意味不明な態度をとるSに、さすがに、これ以上

突っ込めなかったのか、新人さんたちは、仕事に

戻った。

 

いや・・・何だかな~。

すっきりしない展開。

 

そもそも、迂闊に、思い出話なんか喋るから、

こういう誤解をされたんじゃないか!

いい迷惑だ、全く!

 

ほんわかした、いい思い出だった筈の、有馬温泉での

出会いですら、泥水のように濁すつもりか?

 

一体何の因果が、こうさせるのか・・・・。

 

この頃の私は、Sとの三度の出会いが、意地悪な

神様の「悪戯」に思えて仕方が無かった。